エリート官僚と偽りの婚約 ~魔法が解けるまで、あなたと仮初の恋をします~
「正俊さん」
夕食を済ませて、食器の片付けを終えたあとに切り出した。今が適切なタイミングなのかはわからないけど、今だと思い切らないと、躊躇したままずっと言えないと思った。
ソファに隣り合って座ると、正俊さんがこちらへ視線を向ける。私は小さく息を吸ってから、スマホの画面を正俊さんに見せた。
表示されているのは、うちの大学図書館のホームページで――ビブリオバトル参加者募集のページ。
「今日、『参加者の声』のページができたんです。ビブリオバトルに参加してくれた学生さんからの、感想や意見がまとめられていて……」
ビブリオバトルで、読書がより楽しくなりました。
毎回参加しています。自分の発表はもちろん、他の参加者のプレゼンテーションを聞くのが楽しみです。
様々な感想や意見の中に――。
「……ビブリオバトルのおかげで、プレゼン能力が上がりました。留学プログラムの研修生に選ばれ、夢だった海外留学が叶いました」
私が表示させた『参加者の声』を、正俊さんが呆然と読み上げる。読み上げたあと、彼はうろたえたように瞳を揺らした。
「財務省に入れなかったって、この前、正俊さんは言ったけど」
正俊さんの目を真っ直ぐに見て、まるで祈るような気持ちで続ける。
「正俊さんが、文部科学省の官僚として図書館に出向してきてくれたから。だから、学生さんの夢が叶いました」
正俊さんからの返事はない。逸る気持ちで言い募る。
「正俊さんが、財務省じゃなくて文部科学省だったから、だから……正俊さんは、出来損ないじゃなくて」
言葉が上手く出てこない。もどかしさからか瞳に涙がにじんで、私がぎゅっと眉根を寄せると、正俊さんの指が眦に触れた。私の涙を払った彼は、
「ありがとう」
眉尻を下げて微笑んで――私を引き寄せて抱きしめた。
はっと息を呑むと、「すみません」と彼が囁く。
「今、顔を見られたくなくて」
彼の声はわずかに掠れていた。ふたりぶんの心音が重なる温もりのなかで、
「……すみませんでした」
そう言って彼が私を手離すまで、私は眼差しをふるわせていた。
夕食を済ませて、食器の片付けを終えたあとに切り出した。今が適切なタイミングなのかはわからないけど、今だと思い切らないと、躊躇したままずっと言えないと思った。
ソファに隣り合って座ると、正俊さんがこちらへ視線を向ける。私は小さく息を吸ってから、スマホの画面を正俊さんに見せた。
表示されているのは、うちの大学図書館のホームページで――ビブリオバトル参加者募集のページ。
「今日、『参加者の声』のページができたんです。ビブリオバトルに参加してくれた学生さんからの、感想や意見がまとめられていて……」
ビブリオバトルで、読書がより楽しくなりました。
毎回参加しています。自分の発表はもちろん、他の参加者のプレゼンテーションを聞くのが楽しみです。
様々な感想や意見の中に――。
「……ビブリオバトルのおかげで、プレゼン能力が上がりました。留学プログラムの研修生に選ばれ、夢だった海外留学が叶いました」
私が表示させた『参加者の声』を、正俊さんが呆然と読み上げる。読み上げたあと、彼はうろたえたように瞳を揺らした。
「財務省に入れなかったって、この前、正俊さんは言ったけど」
正俊さんの目を真っ直ぐに見て、まるで祈るような気持ちで続ける。
「正俊さんが、文部科学省の官僚として図書館に出向してきてくれたから。だから、学生さんの夢が叶いました」
正俊さんからの返事はない。逸る気持ちで言い募る。
「正俊さんが、財務省じゃなくて文部科学省だったから、だから……正俊さんは、出来損ないじゃなくて」
言葉が上手く出てこない。もどかしさからか瞳に涙がにじんで、私がぎゅっと眉根を寄せると、正俊さんの指が眦に触れた。私の涙を払った彼は、
「ありがとう」
眉尻を下げて微笑んで――私を引き寄せて抱きしめた。
はっと息を呑むと、「すみません」と彼が囁く。
「今、顔を見られたくなくて」
彼の声はわずかに掠れていた。ふたりぶんの心音が重なる温もりのなかで、
「……すみませんでした」
そう言って彼が私を手離すまで、私は眼差しをふるわせていた。