エリート官僚と偽りの婚約 ~魔法が解けるまで、あなたと仮初の恋をします~
 瞳を揺らめかせる私に、神楽坂さんが囁く。

「もう全部忘れてしまえばいい。俺が結城を忘れさせます。偽物でも、本物より完璧に愛します」

 神楽坂さんが、真っ直ぐに私を見据える。

「俺はあなたを俺のものにしたい。あなたは、結城を忘れるために俺を利用して」

 彼は冷たい眼差しのまま、甘やかな声で告げる。

「利害一致の取引です」

「……利害一致」

 その言葉に、身に覚えがあった。

 履き古したパンプスで歩いた夕やけの街、過労で倒れた私は正俊さんに介抱された。その日のうちに、私は彼に提示された条件を了承して、利害一致の偽りの婚約関係を結んだ。

 偽りの日々の中、正俊さんと過ごした時間はどうしようもなく幸せだった。私が彼に恋した日々は、宝石みたいにきらめいていた。

 その日々が本物じゃなかったことを、私はちゃんと知っている。
 それでも、偽物でも――宝石じゃなくてガラスのイミテーションだったのだとしても、私が受け止めたきらめきを上書きしたくない。

 正俊さん以外だったら、誰も代わりにならない。
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