なりそこないのシンデレラ ~エリート官僚と偽りの婚約!?~
 窓のレースカーテン越しに、夕やけのオレンジが差し込む。
 2月最終週の月曜日。月に一度の図書館休館日。

 部屋に運び込んだ段ボールは、自分でも拍子抜けするくらいに少なかった。結城さんが手配してくれた引っ越し業者のお兄さんも、拍子抜けしていた気がする。

 私の役目は、偽物の婚約者。
 必ずしも、結城さんと一緒に暮らす必要はない。

 だけど、私が暮らすアパートの契約更新が4月に迫っていたから、それならいっそ、と一緒に暮らすことを提案された。
 結城さん曰く、――仕事柄、あまり家にはいないんです。使っていない部屋が一部屋あるし、自由にしていただいて構いません。一緒に暮らしているほうが、何だか婚約者っぽいですし。

 そんな経緯で、今日から暮らすことになった結城さんのマンション。

 一階の共用エントランスに足を踏み入れた瞬間から、世界の重厚さが変わった気がした。つやつやとした木目の壁に、暖かな色合いの間接照明。そして、一流ホテルを思わせる調度品――柔らかな絨毯を踏みながら、思わず息を呑んだのは、つい一時間前のこと。

 鍵を渡された1401号室は、角部屋の1LDK。キッチンだけで、私が暮らしていたワンルームと同じくらいの広さがあった。隣接したリビングダイニングには、ガラス製のローテーブルと、L字型のソファ。ソファの生地はチャコールグレーで、部屋全体が落ち着いた色合いでまとめてある。

 そんななかで、私が自由に使っていいと言われたのは、クイーンサイズのベッドが置かれた寝室だった。
 使っていいとは言われたものの――じゃあ、結城さんはどこで寝るんだろう?

 荷解きをしながら首を傾げていたところで、ローテーブルの上に置いていたスマホが鳴った。
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