エリート官僚と偽りの婚約 ~魔法が解けるまで、あなたと仮初の恋をします~

*6章* 最終対決

 二階の奥、西日が差し込む突き当りの部屋。
 お父さんに買ってもらった本棚は捨てられて、私だけの小さな図書館はなくなってしまった。

 それでも、私が暮らしたあの家に、お父さんとの思い出があった。内緒話を打ち明けたリビングにも、一緒にシチューを作ったキッチンにも、呼ばれて駆け下りた階段にも。

 だけど、芙美子さんが美しい面差しで笑ったから。

 ――どうしても大学に行くなら、寮に入れるところがいいんじゃない? 通学が大変でしょう?

 着替えと少しの本だけを持って、私はあの家を出た。

 もう顔も覚えていない、私の亡くなったお母さんが使っていたという玄関の花瓶も、何もかも全部置き去りにして。
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