社畜と画家は真っ新なキャンバスに何を描く

 それに気づいて思わず彼の瞳とキャンバスに描かれた月を何度も見比べていると、彼はきょとんと首を傾げた。

 「あの、話聞いてる?」
 「……綺麗」
 「え?」

 カタリと机の上にキャンバスを置く。そして、代わりに彼の頬を両手で掬った。

 「月が綺麗ですね」
 「……?」

 彼の瞳に、月光が差し込む。

 「市野さん。お返事くれませんか?」
 「……いいの?」
 「はい。私はシンデレラにはなれませんが、終電を逃した後の月を愛でることはできます」

 何を言っているのか理解したらしく、彼は私の両手の上に自分の手を重ねてくれた。

 「終電を逃した後以外の時も愛でてね」
 「日曜日の昼間とかですか?」
 「うん」

 くすくすと笑いながら、市野さんは改めて私を見上げた。


 「…死んでもいいぐらい幸せだよ」


 ロマンチックな告白は、唯一無二の絵と共に。


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