私なんかが神様のお嫁さんになりました

しかしその夜の事だった。
杏が食事の片づけをしていると、女中頭のお多恵が杏に声を掛けた。
お多恵は杏の身の上を不憫におもっており、時折杏の味方をしてくれている。

「杏、旦那様と奥様がお呼びだよ…すぐに行きな。」

「…はい。」

「…杏、何を言われるか分からないけど気をしっかり持つんだよ。」

杏は大きく頷き、お多恵に一礼すると父親達が待つ居間へと向かった。

部屋に入ると父親と継母は珍しく笑顔を見せた。
なにか嫌な予感しかしない。

父親が杏の方を見て話し始めた。

「杏、お前に良い話が来ているぞ。」

「…あの…良い話とは…」

「お前には神様に嫁いでもらうことになった。」

「お父様…それは…」


これは杏も知っている話だ。
神様に嫁ぐとは生贄になるという事だ。
古くから生贄には花嫁衣裳を着せて神に捧げる風習だ。

義母は作り笑顔から一瞬で真顔になり話し始めた。

「この3年間ほどこの村には災いばかり起こっている。それを沈めるには神へ捧げものが必要だと村の者達が言っているんだ。神様に嫁ぐなんて幸せ者だよ杏。どうせあんたは嫁に行かれるわけないんだから神様の供物になれることを光栄に思うんだね。」

「…はい。…わかりました。」

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