私なんかが神様のお嫁さんになりました
「杏様、私のことは吉乃と呼んでください。お友達になってくださいますか」

「もちろんです。では、私は杏と呼んでください。」

杏は天の国で初めて友達ができたことがとても嬉しかった。
思わず口角が少し上がっていたようだ。

「杏は笑顔の方が可愛いですよ。」

すると、会場の奥から声が聞こえて来た。

「皆さま、そろそろ会を始めますよ!テーブルの近くに集まってください。」


杏と吉乃が皆の方に近付くと、白様のお母様が前で大きな声を出した。

「本日は我が息子である白龍神の嫁を紹介させてもらいます。…杏、前においで。」

杏がお母様に呼ばれて前に出て皆にお辞儀をしたその時だった。

「ちょっと待ってもらいたいわね。白龍神様の許婚は私の娘である豊穣姫ですよ。」

大きな声をあげたのは豊穣姫の母親だった。
豊穣姫と同様に輝くばかりに美しい母親だった。

「その人間は聞くところによると、人間界から生贄として差し出されたときいています。そんな娘を白龍神様の嫁にするとは信じられないわ…ねぇ皆さんもそう思うわよね。」

豊穣姫の母親の言葉に皆はひそひそと何かを話しながら眉をひそめる者も多くいた。
豊穣姫はその様子を見てニヤリと口角を上げる。

すると、白様のお母様は杏に向かって微笑んだ。

「杏、あなたが毎日私達の神社を掃除して最後に歌ってくれた歌をここで歌ってくれないかい。」

「…えっ、ここで…ですか。」

お母様は杏に向かって大きく頷いた。
杏は訳が分からないが、お母様から言われた以上は歌うしかない状況のようだ。

杏は顔を上げて皆を見ると、大きく息を吸った。
そしていつも神社で捧げていた歌を歌い出した。
杏の母親から教わったいろはに…と続く歌。

すると、会場から驚きの声が上がったのだ。
杏は歌を最後まで歌いきると皆に向かって頭を下げた。

その時だった、会場から皆の拍手と歓喜の声が聞こえて来た。

会場の中で一番年配と思われる女性が声をあげた。

「この歌は古くから神を信仰する者達が歌い伝えてきた歌です。そして遠い昔にこの歌を捧げてくれた者が魔に落ちた神をその命をかけて助けてくれた尊い歌です。」

白様のお母様は静かに話し始めた。

「恐らく杏も知らない事かも知れないが、杏はその尊き者の子孫にあたるのです。その歌はまだ幼い杏に母親が教えたのでしょう。」


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