私なんかが神様のお嫁さんになりました

すると杏は立ち止まり神様の手をギュッと力強く握ったのだった。

「どうした…杏。」

神様が杏の方へ振り返った。

「神様…お願いです。私の命と引き換えにこの村を救ってください。…どうかお願いです。」

杏はフルフルと震えながら涙を流していた。

神様は一瞬戸惑いの表情を見せたが杏の涙を優しく指で拭った。

「杏を泣かせるわけにはいかないのぉ。村人よ杏に感謝するのだな。本来であれば村の災難は自分たちが招いた結果だ。雨ばかりを頼り水汲みを怠り、汚れた川から疫病も発生しておるのだ。…じゃが、我は村の災いを一度だけ払う事にする。疫病も凶作も全て改善していくだろう。だが、これは一度だけだ肝にしかと銘じるが良い。」

そして神様が天に向かって手を上げると空から眩いばかりの光が降り注いできたのだった。
いつもこのところ曇りでどんよりとしていた空がみるみる青空となっていく。
すると村のいたる所から煙のようにヒュルヒュルと黒い煙が舞い上がっていくではないか。

やがて黒い煙は全て天に向かって吸い込まれていった。

そして煙の消えた村には清々しい風が吹き始めて、太陽が光り輝いている。
村人たちは皆歓喜の声をあげて神様に手を合わせたのだった。

その様子を見ていた杏が静かに声をあげる。

「すごいです。神様ありがとうございます。杏は心置きなく死ねます。」

「杏よ、お前は死にはしない。これからは誰よりも幸せにする。」

神様は杏の手を引いて神社の中へと歩き出した。

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