忘れたはずの恋心に、もう一度だけ火が灯る ~元カレとの答え合わせは、終電後の豪雨の中で~


 それから何時間が経っただろう。

 喋っては飲み、喋っては食い。

 ほとんど休みなく、会話も弾みに弾んでいた。

 「そういえば、時間大丈夫か?」
 「ん、確認するの忘れてた。えーっと…」

 鞄の中からスマホを取り出して確認する。

 ≪00時02分≫

 表示された時間を理解できなくて、一瞬固まってしまう。

 「やっっっっば!!!! 帰らないと!!終電なくなる!!!」
 「おー。気をつけてな」
 「…なんで慌ててないのよ」
 「俺、最近この辺りに引っ越したから。ここから家まで徒歩10分」

 どうりで全く焦っていないわけだ。お酒の影響もあったと思うが、それにしても気が抜けすぎていた。でもまだ間に合う。今から会計をして、走って駅に向かえば終電には乗れるはず。

 「ごめん!終電に乗って帰るわ!会計って、割り勘でいい?」
 「今日は俺の奢りでいいよ」
 「それはやだ。払わせて」

 急ぎながらも財布の中を漁り、1人分の代金を圭吾に渡す。私たちのルールだった『どちらが多く食べたとしても割り勘は合計金額から半分』というのを勝手に有効にさせてもらうが許してほしい。

 「はいこれ!ちょうど半分ね!」
 「分かった。じゃあ会計しておく」
 「本当にごめんね!!また会お!帰ったら連絡する!」
 「分かった」

 バタバタと慌ただしく出入り口に向かう。


 ガラガラガラ


 「へ…?」

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