忘れたはずの恋心に、もう一度だけ火が灯る ~元カレとの答え合わせは、終電後の豪雨の中で~
招かれたのは見知らぬ部屋
「どうぞ」
「おじゃましまーす」
招かれたのは圭吾の家。
マンションの5階に位置するそこは、1人暮らしには少し広めの間取りだった。
「いやー、案外濡れたな」
「どんどん雨強まるし、本当に勘弁してほしいよね」
居酒屋の近くにあるコンビニまで走り、ビニール傘を買ったはいいが、正直太刀打ちできていない。大声で話さないと聞こえない程の豪雨に、ビニール傘は無力すぎた。
「とりあえず風呂沸せるから、タオルで拭いといて」
「ありがとう」
圭吾はタオルを渡すと、そのまま浴室があると思われる方に駆けて行った。彼もそれなりに濡れているのに申し訳ない。そう思うも、濡れた状態で勝手の分からない部屋をうろつくよりかはマシだと思って大人しくしておく。
程なくして戻って来た圭吾は、頭にタオルをかけていた。シャツも結構濡れてしまっている。
「大丈夫か?寒くない?」
「うん。ほんと、ごめんね。ここまでお世話になるつもりはなかったのに…」
「気にすんなって。俺も嫌だったら提案してないし。俺の性格は分かってるだろ」
そう言って爽やかに笑われる。
気にしなくていいと言われても、どうしても申し訳なさが勝ってしまう。
それを察したのか、圭吾は下手なフォローをせず、気を紛らわせるかのようにテレビをつけてくれた。