十年越しの初恋は、永遠の誓いへ
第四十章 嫉妬に揺れる蓮の視線
昼休みの食堂。
席を見つけられずに立ち尽くす私の隣に、佐伯が自然に並んだ。
「一緒に食べよう」
温かい声とともに、彼は迷いなく私のトレーを受け取り、窓際の席へ導いてくれた。
「誰に何を言われても、気にするな。君は君だ」
その言葉に胸が熱くなり、視界がにじむ。
笑顔を見せようとした瞬間、ふと視線を感じた。
顔を上げると、食堂の奥に蓮の姿があった。
無表情のようでいて、鋭く揺れる瞳がこちらを見つめている。
その視線には、抑え込まれた苛立ちと嫉妬が滲んでいた。
午後の会議。
佐伯が発言するたびに、蓮の表情がわずかに険しくなるのを感じた。
「彼女の提案は有効です」
佐伯の言葉に、周囲の同僚が頷く。
だが蓮は低く遮った。
「根拠が甘い。再検討だ」
冷たく突き放す声。
まるで佐伯を否定することで、私を遠ざけようとしているように思えた。
会議後、廊下で背後から声がした。
「……西園寺」
振り返ると、蓮が立っていた。
「……佐伯と、最近よく一緒にいるな」
低い声。
問いかけではなく、咎めるような響きだった。
「彼は、私を支えてくれているだけです」
必死に言葉を重ねる。
けれど彼は苦々しげに視線を逸らした。
「……支えが必要なほど、俺は無力ってことか」
胸が張り裂けそうになった。
「違います! 私はただ……」
必死に声を上げたのに、蓮は冷たい沈黙で答えを遮った。
その瞳に宿っていたのは、愛と嫉妬の狭間で揺れる複雑な色。
それを読み取るたびに、私の心はますます乱れていく。
――嫉妬に揺れる蓮の視線。
それは拒絶よりも痛く、優しさよりも残酷だった。