十年越しの初恋は、永遠の誓いへ
第四十一章 涙の衝突
会議室を出たあとも、蓮の言葉が耳から離れなかった。
「……支えが必要なほど、俺は無力ってことか」
違う。
そんなふうに思ってほしくない。
でも、どう言葉を尽くしても、彼の心には届かない気がした。
その夜。
残業を終えたオフィスで、私はコピー機の前に立ち尽くしていた。
そこへ現れたのは、蓮だった。
「……まだ残っていたのか」
冷たい声。
けれどその瞳には、明らかな苛立ちが宿っていた。
「部長……」
勇気を振り絞って口を開く。
「どうして、あんな言い方をするんですか。
私はただ、仕事を――」
「仕事?」
彼は低く笑った。
「本当にそうか? 佐伯と一緒にいる姿ばかりが目につく」
「それは……私が弱いからです」
涙が滲む。
「あなたが突き放すから、私は……」
「突き放す?」
彼の声が強くなった。
「俺は、お前を守れない。……だから距離を取っているんだ」
「守れないなんて言葉、もう聞きたくありません!」
感情があふれ、叫んでいた。
「十年前も今も、何も言わずに背を向けて……そんなの、守ることじゃない!」
胸が痛み、涙が止まらなかった。
蓮は拳を握りしめ、苦しげに目を伏せた。
「……俺は、お前を傷つけてばかりだ」
「違います! 私は、あなたに信じてほしいだけなんです」
必死に伸ばした言葉は、虚空に消えていく。
彼は答えを返さず、ただ沈黙を選んだ。
涙で滲む視界の中で、彼の背中が遠ざかっていく。
その背を追いたいのに、足は動かなかった。
――涙の衝突。
ぶつけ合った心は、さらに深い溝を刻んでしまった。
「……支えが必要なほど、俺は無力ってことか」
違う。
そんなふうに思ってほしくない。
でも、どう言葉を尽くしても、彼の心には届かない気がした。
その夜。
残業を終えたオフィスで、私はコピー機の前に立ち尽くしていた。
そこへ現れたのは、蓮だった。
「……まだ残っていたのか」
冷たい声。
けれどその瞳には、明らかな苛立ちが宿っていた。
「部長……」
勇気を振り絞って口を開く。
「どうして、あんな言い方をするんですか。
私はただ、仕事を――」
「仕事?」
彼は低く笑った。
「本当にそうか? 佐伯と一緒にいる姿ばかりが目につく」
「それは……私が弱いからです」
涙が滲む。
「あなたが突き放すから、私は……」
「突き放す?」
彼の声が強くなった。
「俺は、お前を守れない。……だから距離を取っているんだ」
「守れないなんて言葉、もう聞きたくありません!」
感情があふれ、叫んでいた。
「十年前も今も、何も言わずに背を向けて……そんなの、守ることじゃない!」
胸が痛み、涙が止まらなかった。
蓮は拳を握りしめ、苦しげに目を伏せた。
「……俺は、お前を傷つけてばかりだ」
「違います! 私は、あなたに信じてほしいだけなんです」
必死に伸ばした言葉は、虚空に消えていく。
彼は答えを返さず、ただ沈黙を選んだ。
涙で滲む視界の中で、彼の背中が遠ざかっていく。
その背を追いたいのに、足は動かなかった。
――涙の衝突。
ぶつけ合った心は、さらに深い溝を刻んでしまった。