十年越しの初恋は、永遠の誓いへ
第四十二章 元婚約者の最後の仕掛け
蓮との衝突から一夜が明けても、胸の痛みは消えなかった。
「十年前も今も、何も言わずに背を向けて……そんなの、守ることじゃない!」
自分の叫びが耳に残り、心をえぐり続けていた。
昼休み。
人気の少ない廊下を歩いていると、ふいに冷たい声が響いた。
「随分と、藤堂さんを困らせているみたいね」
振り向くと、そこには元婚約者が立っていた。
その口元には勝ち誇った笑みが浮かんでいる。
「あなたが泣いても、藤堂さんは絶対に戻ってこない」
彼女の声は甘く、それでいて鋭かった。
「だって、彼は私と結婚するはずだった人。……その事実は消えないのよ」
「……っ」
返す言葉を失う。
「ねえ、西園寺さん。どうしてそんなに必死なの?
私なら、藤堂さんの“資格がない”理由も全部知ってる」
挑発的に近づく彼女の瞳が、私の心を突き刺す。
「教えてあげようか? それとも、自分で確かめる?」
その瞬間、後ろから足音が響いた。
振り返ると、そこに蓮の姿があった。
「……何をしている」
低く鋭い声。
元婚約者の笑みがわずかに揺らぐ。
「蓮さん。私はただ、彼女に現実を教えてあげてただけ」
わざとらしい声。
蓮は険しい表情で一歩前に進み、私を庇うように立った。
「二度と彼女に近づくな」
低く抑えた声に、彼女は目を細め、冷ややかに笑った。
「相変わらずね。……でも、あなたの罪は消えない」
その言葉を残し、彼女は踵を返して去っていった。
残された空気は重く、苦しかった。
「部長……」
恐る恐る声をかけると、彼は険しい表情のまま口を開いた。
「……俺には、やはり資格がない」
また、その言葉。
涙が込み上げ、喉の奥が熱くなる。
――元婚約者の最後の仕掛けは、蓮の心をさらに縛りつけ、私の心を深く傷つけていった。
「十年前も今も、何も言わずに背を向けて……そんなの、守ることじゃない!」
自分の叫びが耳に残り、心をえぐり続けていた。
昼休み。
人気の少ない廊下を歩いていると、ふいに冷たい声が響いた。
「随分と、藤堂さんを困らせているみたいね」
振り向くと、そこには元婚約者が立っていた。
その口元には勝ち誇った笑みが浮かんでいる。
「あなたが泣いても、藤堂さんは絶対に戻ってこない」
彼女の声は甘く、それでいて鋭かった。
「だって、彼は私と結婚するはずだった人。……その事実は消えないのよ」
「……っ」
返す言葉を失う。
「ねえ、西園寺さん。どうしてそんなに必死なの?
私なら、藤堂さんの“資格がない”理由も全部知ってる」
挑発的に近づく彼女の瞳が、私の心を突き刺す。
「教えてあげようか? それとも、自分で確かめる?」
その瞬間、後ろから足音が響いた。
振り返ると、そこに蓮の姿があった。
「……何をしている」
低く鋭い声。
元婚約者の笑みがわずかに揺らぐ。
「蓮さん。私はただ、彼女に現実を教えてあげてただけ」
わざとらしい声。
蓮は険しい表情で一歩前に進み、私を庇うように立った。
「二度と彼女に近づくな」
低く抑えた声に、彼女は目を細め、冷ややかに笑った。
「相変わらずね。……でも、あなたの罪は消えない」
その言葉を残し、彼女は踵を返して去っていった。
残された空気は重く、苦しかった。
「部長……」
恐る恐る声をかけると、彼は険しい表情のまま口を開いた。
「……俺には、やはり資格がない」
また、その言葉。
涙が込み上げ、喉の奥が熱くなる。
――元婚約者の最後の仕掛けは、蓮の心をさらに縛りつけ、私の心を深く傷つけていった。