十年越しの初恋は、永遠の誓いへ

第四十四章 涙の告白

 会議が終わったあと、廊下で蓮の背中を見つけた。
 もう何度も、その背を追ってきた。
 けれどいつも届かず、置き去りにされるばかりだった。

 「……部長」
 呼びかける声は震えていた。

 彼は足を止めたが、振り返らない。
 それでも、私は勇気を振り絞った。



 「どうして……どうして、私を突き放すんですか」
 押し殺していた感情が一気にあふれ出す。
 「私は、あなたに守られたいんじゃない。
 ただ――信じてほしかったんです」

 涙が頬を伝い、言葉が滲む。

 「十年前から、ずっと……あなたが好きだった。
 今も、ずっと……あなたしか見えないのに」



 蓮がゆっくりと振り返る。
 その瞳は苦しげに揺れていた。

 「……俺は、君を幸せにできない」
 「そんなの、私が決めます!」
 声が裏返る。
 「もう一度傷ついても構わない。……それでも、あなたじゃなきゃ駄目なんです」



 沈黙のあと、彼の手が僅かに震えながら伸びかけて――けれど止まった。

 「……俺には資格がない」
 また、その言葉。

 「いい加減にしてください!」
 堰を切ったように涙が溢れた。
 「資格がない、なんて言葉で全部終わらせないでください……!
 私は、ただあなたに愛されたいだけなんです!」



 その必死の告白に、蓮の表情が大きく揺らいだ。
 「……紗良」
 初めて名前を呼ぶ声が、切なく震えていた。

 その一言だけで、胸が張り裂けそうになる。
 彼の瞳に確かに宿った想い。
 それを感じ取った瞬間、涙は止められなかった。



 ――涙の告白。
 十年越しの想いは、ようやく彼に届きはじめていた。
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