十年越しの初恋は、永遠の誓いへ

第四十六章 揺れる決意

 十年前の真実。
 蓮が「守るために突き放した」と語った言葉が、頭から離れなかった。

 ――好きだからこそ離れた。
 その想いを信じたいのに、心は簡単に答えを出せなかった。



 夜、自室で一人、カーテンの隙間から街灯を見つめる。
 涙で濡れた瞳に映る光が揺れ、胸の奥の迷いも揺れていた。

 「私は……どうしたらいいの」
 声に出しても答えはなく、ただ胸が締めつけられるばかり。



 翌日。
 オフィスで資料をまとめていると、佐伯が静かに声をかけてきた。
 「顔色がよくない。昨日、何かあったんだろう?」

 彼の優しい瞳に、胸が痛む。
 「……私、何も返せないのに」
 呟くと、佐伯は首を振った。

 「返さなくていい。俺はただ、君のそばにいたいだけだから」

 その言葉に涙が滲む。



 蓮と佐伯。
 十年前の想いと、今そばにある優しさ。
 どちらも本物で、どちらも私を苦しめる。

 心は蓮を求めているのに、佐伯の温もりにすがりたくなる。
 矛盾する感情に引き裂かれそうだった。



 「……決めなくちゃ」
 小さく呟いた。
 けれど、その決意はまだ揺れている。

 ――愛する人にすがるのか。
 ――優しい人に身を委ねるのか。

 答えのない問いが、胸の奥で繰り返し響いた。



 揺れる決意。
 その先に待つのは、希望か、絶望か――。
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