十年越しの初恋は、永遠の誓いへ
第八章 冷たい拒絶
まだ残る指先の熱が、心を落ち着かせてくれなかった。
あの距離の近さ、重なった手の感触――。
ほんの一瞬だったのに、十年前と同じときめきが蘇ってしまった。
――やっぱり、私はまだ彼を……。
そう思った矢先だった。
「西園寺」
低い声に呼ばれて振り向くと、廊下の奥で蓮が腕を組んで立っていた。
周囲に人影はない。
静まり返ったオフィスに、雨の音だけが遠く響いている。
「さっきの会議資料……助けてくださって、ありがとうございます」
勇気を振り絞って言うと、彼は微動だにせず、冷たい視線をこちらに向けた。
「……勘違いするな」
「え……?」
「俺は仕事をしただけだ」
淡々とした声。
「……十年前のことを蒸し返すな。もう、あの頃の俺たちはいない」
「っ……」
胸が締めつけられる。
十年前――あの傷を、彼も覚えているのに。
「どうして……そんな言い方をするんですか」
必死に問いかける。
すると彼はほんの一瞬だけ目を伏せ、すぐに冷たい表情を取り戻した。
「……これ以上、近づくな」
突き放すように言い捨てて、彼は背を向けた。
歩き去る足音が遠ざかるたび、胸の奥に広がっていくのは虚しさだけだった。
「近づくな、なんて……」
小さく呟いた声が震える。
――なら、どうして優しくするの。
――どうして触れた指先は、あんなにも熱かったの。
答えはどこにもなく、ただ心だけが揺さぶられていく。
夜、ひとりきりの部屋で膝を抱えた。
「嫌いになれたらいいのに……」
そう呟いた瞬間、涙が頬を伝う。
十年前の別れも、今の冷たい拒絶も。
全部が私を傷つけるのに、どうしてまだ彼を想ってしまうんだろう。
――初恋は、残酷すぎる。
あの距離の近さ、重なった手の感触――。
ほんの一瞬だったのに、十年前と同じときめきが蘇ってしまった。
――やっぱり、私はまだ彼を……。
そう思った矢先だった。
「西園寺」
低い声に呼ばれて振り向くと、廊下の奥で蓮が腕を組んで立っていた。
周囲に人影はない。
静まり返ったオフィスに、雨の音だけが遠く響いている。
「さっきの会議資料……助けてくださって、ありがとうございます」
勇気を振り絞って言うと、彼は微動だにせず、冷たい視線をこちらに向けた。
「……勘違いするな」
「え……?」
「俺は仕事をしただけだ」
淡々とした声。
「……十年前のことを蒸し返すな。もう、あの頃の俺たちはいない」
「っ……」
胸が締めつけられる。
十年前――あの傷を、彼も覚えているのに。
「どうして……そんな言い方をするんですか」
必死に問いかける。
すると彼はほんの一瞬だけ目を伏せ、すぐに冷たい表情を取り戻した。
「……これ以上、近づくな」
突き放すように言い捨てて、彼は背を向けた。
歩き去る足音が遠ざかるたび、胸の奥に広がっていくのは虚しさだけだった。
「近づくな、なんて……」
小さく呟いた声が震える。
――なら、どうして優しくするの。
――どうして触れた指先は、あんなにも熱かったの。
答えはどこにもなく、ただ心だけが揺さぶられていく。
夜、ひとりきりの部屋で膝を抱えた。
「嫌いになれたらいいのに……」
そう呟いた瞬間、涙が頬を伝う。
十年前の別れも、今の冷たい拒絶も。
全部が私を傷つけるのに、どうしてまだ彼を想ってしまうんだろう。
――初恋は、残酷すぎる。