十年越しの初恋は、永遠の誓いへ
第九章 笑顔の裏の本音
「これ以上、近づくな」
あの冷たい言葉が耳に残り、眠れぬ夜を過ごした。
拒絶されても、まだ彼を求めてしまう自分が情けない。
心に蓋をして、仕事に集中しようと決意したのに――。
翌日の会議室。
藤堂部長は普段以上に穏やかな笑顔を浮かべていた。
的確な指示を飛ばし、周囲に安心感を与える完璧な上司の顔。
「さすが部長、落ち着いてますよね」
「やっぱり頼りになるなぁ」
同僚たちの囁きを聞きながら、私は心の奥でざらつきを覚えていた。
――あの笑顔は、本当に彼のもの?
資料の確認中、彼がふとこちらを見た。
目が合った瞬間、私は小さく息を呑む。
笑っている。けれど、その瞳の奥にあるものは――。
「……っ」
言葉にならない感情が胸に広がった。
冷たさでも、優しさでもない。
まるで、苦しみを隠すための仮面のような笑顔。
会議後、廊下で声をかけた。
「部長、さっきの件ですが……」
用件を伝えるふりをして、本当は確かめたかった。
彼は柔らかい笑顔で頷く。
「任せるよ。西園寺さんなら大丈夫だ」
周囲には聞こえないほどの声で囁かれたその一言に、心臓が揺れる。
――信じてくれている?
それとも、突き放すための優しさ?
「……本当は」
思わず口をついて出た言葉を、彼が制するように視線を逸らした。
「何も考えるな。余計なことに振り回されるな」
表情は笑顔のまま。
けれど、その声は苦しげに掠れていた。
背を向けて去っていく彼を見送りながら、胸が軋む。
「……笑わないでほしい」
心の中で小さく呟く。
あの笑顔が、彼の本音を隠しているとわかってしまうから。
十年前と同じ、言葉にできない想いが、瞳の奥で揺れているから。
あの冷たい言葉が耳に残り、眠れぬ夜を過ごした。
拒絶されても、まだ彼を求めてしまう自分が情けない。
心に蓋をして、仕事に集中しようと決意したのに――。
翌日の会議室。
藤堂部長は普段以上に穏やかな笑顔を浮かべていた。
的確な指示を飛ばし、周囲に安心感を与える完璧な上司の顔。
「さすが部長、落ち着いてますよね」
「やっぱり頼りになるなぁ」
同僚たちの囁きを聞きながら、私は心の奥でざらつきを覚えていた。
――あの笑顔は、本当に彼のもの?
資料の確認中、彼がふとこちらを見た。
目が合った瞬間、私は小さく息を呑む。
笑っている。けれど、その瞳の奥にあるものは――。
「……っ」
言葉にならない感情が胸に広がった。
冷たさでも、優しさでもない。
まるで、苦しみを隠すための仮面のような笑顔。
会議後、廊下で声をかけた。
「部長、さっきの件ですが……」
用件を伝えるふりをして、本当は確かめたかった。
彼は柔らかい笑顔で頷く。
「任せるよ。西園寺さんなら大丈夫だ」
周囲には聞こえないほどの声で囁かれたその一言に、心臓が揺れる。
――信じてくれている?
それとも、突き放すための優しさ?
「……本当は」
思わず口をついて出た言葉を、彼が制するように視線を逸らした。
「何も考えるな。余計なことに振り回されるな」
表情は笑顔のまま。
けれど、その声は苦しげに掠れていた。
背を向けて去っていく彼を見送りながら、胸が軋む。
「……笑わないでほしい」
心の中で小さく呟く。
あの笑顔が、彼の本音を隠しているとわかってしまうから。
十年前と同じ、言葉にできない想いが、瞳の奥で揺れているから。