この歪んだ愛、いっさい油断なりません。
4話 まったく違う世界
◯3話の回想からスタート 結都と鈴音、一緒に家に帰る。
鈴音『兄妹ってこれくらい心配するの普通なの?』
結都『普通どころか俺はかなり控えめなほうだよ』
◯回想から戻る 休みの日・鈴音のバイト先のカフェ
鈴音(とは言うものの……やっぱりどこかずれてるような)
お客さんがいないので、カウンターのほうで立ったまま考え事をしてる鈴音。
鈴音「はぁ……」
葵「あれ、鈴音先輩! どうしたんですかため息ついちゃって」
鈴音の後ろからひょこっと覗き込む感じで現れる。
鈴音「あぁ、葵くん……。いや、兄妹の関係性っていろいろ考えさせられるものがあるよね」
ホールスタッフで働いている鈴音のひとつ下、他校の後輩、三宮葵(さんのみや あおい)可愛いキャラを確立しており、養いたい男子ナンバー1という称号の持ち主。顔立ち、性格ともに可愛い系(※ただし裏はものすごい腹黒い)腹黒い部分はまだ隠している。身長170センチ前後。
葵「鈴音先輩って兄妹いましたっけ?」
まだ苗字は芦原のまま。周りにも親しい人と店長以外にはまだ誰にも言っていない。
鈴音「友達の話! お兄さんが過保護で悩んでるみたい」
葵「そうなんですね~。たまにいますよね、兄妹愛が強い人。僕も兄がいるんでなんとなくわかります」
鈴音(結都くんの場合は愛が強い&重いのダブルコンボだしなぁ……)
鈴音「葵くんお兄さんいるんだ! 初知り!」
葵「僕も兄のこと大好きなんで、そのお兄さんの気持ちなんとなくわかりますよ」
鈴音(葵くんは純粋な感じがするけど、結都くんは歪みが見えるというか……)
葵「僕でよかったらなんでも相談に乗るんで。いつでも頼ってくださいっ!」きゅるっとした目で可愛い笑顔
鈴音「ありがとう~葵くん!」
*場面転換
◯放課後・学校の門を出たところ
バイトない日なので、ひとりで家に帰ろうと学校を出ると近くにシルバーの車が停まっている。そこから降りてきた30代前半くらいのスーツ姿の男性(結都のマネージャー山室さん)結都をスカウトした張本人。結都がモデルの活動を始めた時からずっと結都のマネージャーをしている。
山室「あっ、キミが芦原鈴音ちゃんだよね?」
山室のスマホに鈴音の画像。それを見て確認しながら聞いてくる感じ。
鈴音(え、この人誰……知り合いにいたっけ? ってか、なんでわたしのフルネーム知ってるの?)怪しげ&若干疑ってる感じの目で見る鈴音
山室「自己紹介が遅れてごめんね。僕、結都のマネージャーをしてる山室って言います」
名刺を渡される。結都が所属してる事務所の会社名が書いてあることに気づく鈴音。
鈴音(結都くんのマネージャーさんがなんでわたしの学校に?)首を傾げる鈴音
山室「今から少し時間あるかな?」
鈴音「は、はい」
山室「よかった! それじゃあ、早速なんだけど車に乗ってくれる?」
山室が運転席、鈴音が助手席。
山室が鈴音のところに来たのは、結都の撮影スタジオに連れていくため。鈴音がスタジオにいるサプライズをしたいという山室の作戦。結都にはもちろん内緒で。
山室「いやー、最近結都の調子がめちゃくちゃよくてね! 理由聞いたら妹ちゃんの影響がすごいみたいだからさ!」
鈴音「そ、そうなんですね」
鈴音(そっか。マネージャーさんには事情を話してるだろうから、わたしが妹だってことも知ってるってわけだ)
結都がマネージャーに何か変なこと言ってないか若干心配になりつつ山室の話を聞く鈴音。
山室「妹が可愛すぎて毎日ハッピーって言ってたよ」
鈴音「あはは……」苦笑い
山室「鈴音ちゃんの写真を僕に自慢してくるのが日常になってるからね。しかもものすごい解説付きで」
結都が山室に解説してる姿が思い浮かぶ鈴音。
山室「鈴音ちゃんのおかげで結都のモチベ爆上がりだからさ! 今日はサプライズでそんな妹ちゃんがスタジオにいるドッキリ仕掛けちゃおうかなーって」
車内で会話をしていたら、撮影スタジオのビルに到着。
山室と一緒に撮影が行われるスタジオで待つ鈴音。スタッフたくさん(カメラマン、メイク、衣装などなど)スタジオのセットが並んでる感じ。
しばらくして結都がスタジオに入ってくる。
スタッフ「ユイくん入りまーす!」
スタジオにいる全員の視線が結都に向く。撮影なので髪あげて、バチバチにきまってる結都。
放ってるオーラがすごすぎて鈴音も思わずくぎ付けになってる感じに。大勢スタッフがいても鈴音の存在に瞬殺で気づく結都。鈴音を見つけて目を見開く結都。
そのまま鈴音と山室がいるほうへ近づいてくる。
結都「な、ん……で、鈴音がここ、に……? え、なにこれ幻……」困惑とうれしすぎる表情
山室「じゃーん。サプライズ成功‼ 最近結都がんばってるから、サプライズで大好きな妹ちゃん連れてきたよ!」
結都「山室さん神なの……一生ついていく」
山室「うんうん、もっと拝んで撮影がんばれー!」
結都「妹にかっこいいところ見せて惚れさせたい」
鈴音(かっこいいところ見せたいのはまだわかるけど、惚れさせたいは違うじゃん。相変わらず結都くんは少しずれてる)
ほかのメンズモデルも撮影してるので、鈴音に寄り付かないように自分がしているお気に入りのネックレスを鈴音にしてあげる(他の男に対するけん制の意味も込めて)
ものすごいとびきりの顔で鈴音に「俺のこと見てて」って伝えて、撮影スタート。
普段の様子からして撮影とかちゃんとこなしてるんだろうか?と心配する鈴音。どんなふうに撮影してるのか想像がつかない。その心配を跳ね返すようにユイとして撮影をこなしていく結都。言葉では言い表せない、この場を全て支配してしまう、全員の視線をかっさらう、夢中にさせるほどの才能。素人が見てもわかるくらい、本気を出したユイは無双状態、その場にいる人を惹きつけてしまうほどの魅力があることに気づかされる。表情管理が強いし、カメラマンからの難しい要求もそつなくこなして、自分を魅せるのがとてつもなくうまい。
鈴音(一緒に過ごす時間のせいで感覚が麻痺してた。結都くんはわたしの『兄』であり……そして、世間を騒がせるほどの力を持っているモデル『ユイ』でもあるんだ)
少し離れた位置関係で、スポットライトがあたっている結都と大勢に埋もれている鈴音。同じ空間にいるのに差がある感じに。
鈴音(いま結都くんと同じ空間にいるのに。結都くんがまったく違う世界の人みたいで……どこか距離を感じてしまう)
プロとしてしっかり仕事をしている結都に夢中になってる鈴音の隣にふと誰かやってくる。
星「ユイくん、今日はいちだんとかっこいいよねー」
田端星。高校3年生。結都と同じ事務所に所属しているモデル兼インフルエンサー。身長175センチ、銀髪マッシュ。
星の目線が鈴音のネックレスに。星は結都と仲がいいので、結都のお気に入りのネックレスを知ってる。それを鈴音がしてることでけん制してることをなんとなく察する。
鈴音が結都の妹ということは知っている。
星「なるほどねー。キミが噂の鈴音ちゃんだ?」
鈴音「わ、わたしそんな噂になってるんでしょうか」
鈴音(というか、結都くんに負けてないくらい顔が整ってるこのイケメンさんは誰? スタジオにいるってことはモデルとか?)
星「ユイくんがものすごーく自慢してるからさ。今日はスタジオに見学に来たんだ?」
ここであらためて星から自己紹介。結都と仲がいいこと、モデル兼インフルエンサーであることを知る。
鈴音と星が話してるのを遠くから見てる結都。表情は嫉妬してる感じで。
カメラマンから休憩の声がかかった瞬間、ものすごい形相で鈴音と星のもとへ。
鈴音を星から引き離すように結都が自分のほうに引き寄せる。
結都「星……この子俺のってわかんなかった?」
星「わかってたよー。独占欲丸出し過ぎてびっくり」
自分のだって見せつけるように鈴音にベタベタの結都。周りの視線を気にしながら慌てる鈴音。
星「気に入ってるのはわかるけど、ほどほどにね。立場もあるんだからさ」
結都「星に忠告されなくてもわかってるし」
星は別の撮影があるのでここで退散。結都の撮影も無事に終わり、マネージャーの車で一緒に帰ることに。
結都は着替えがあるので、スタジオのビルの外で鈴音がひとり待ってる。マネージャーは車を取りに行っている。
結都がビルから出てくると、ファン数人が結都を囲って話しかけてる様子が見える。鈴音は少し離れたところからそれを見てる感じ。
ファン1「やばっ、本物のユイだ……!!」
ファン2「ここで撮影してるって聞いて、どうしても会いたくて来ちゃいました!!」
ファン3「よかったら握手してもらえないですかっ? 写真も何枚かお願いしたいです!!」
鈴音(ファンの情報網すごいな……)
◯家の近くにファンが来たときの回想
鈴音(家や撮影場所を特定して会いに来るファンの人って結構いるのかな。どうしても会いたい気持ちもわかるけど……)
突撃してくるファンの子に対して複雑な気持ちになる鈴音。
それに、結都との距離が近くてなんだか少しモヤモヤしてる。
握手したいファンをさらっとかわす結都。
結都「ごめんね。いま手ケガしてて握手はちょっと……」
建物の陰に隠れてる鈴音に気づいて目線をやる感じで、握手を断る。
目線が合ったのに気づいた鈴音は、なんだか気まずく感じて身を小さくしてしゃがみ込む。
鈴音(いま、結都くんと目合ったのなんで……?)
しばらく建物の陰に隠れてると、結都がそばにやってくる。ファンたちはもうすでに立ち去ってる。
結都「すーず」
鈴音「…………」
結都「あれー、鈴音ちゃーん。どうしてしゃがみ込んでるの?」ちょっと面白がってる感じの口調で
相変わらず気まずさを感じてる鈴音が逃げようとしたところを結都が先に読んで鈴音の腕をつかむ。
結都「こら、逃げんな」
そのまま結都が鈴音の両手を取って、手をつなぐ感じに。
鈴音「手、ケガしてるんじゃ……」
結都「鈴音以外の子に触れんの嫌だし」
ファンの子には簡単に触れさせない。けど、自分には簡単に触れてくる結都に気持ちをかき乱されていく鈴音の表情。
結都「俺のぜんぶ鈴音のもの」「だから他の女の子には触れない」
鈴音(そうやって特別感出してくるのずるくない……? 結都くんにとって、わたしは星の数ほどいる女の子のうちのひとりで……ただ、妹ってだけ。こんな胸がざわついてるのはきっと、いつもと違う結都くんの一面を見たから? それとも――。)