ダンナ様はアイドル〜8歳年下の彼と、秘密の恋から始まった本気の恋〜

好きな人はアイドル(前編)

 
 「またアナタに会いに来たよ……」
 
 月がそっと太陽の光に手を伸ばす……
そして太陽もまた月の淡い光に手を……。
 どちらがかけても世界は成り立たない……私は今でもそう思ってる。

――――――――――――――

男性アイドルグループ「ENNE(エンネ)」
年代を問わず圧倒的な人気を誇る、国民的6人組男性アイドルグループ。
 メンカラは今どきの和風の色を採用する。
 グループ名は人や物全ては縁から成り立つと意味を持つ。
 
 そしてメンバーは6人組
 
 .陽向輝晶(34歳)
 リーダー、兄貴分の性格、体を鍛えるのが趣 味、メンカラ橙黄
 
 .深水遥斗(33歳)
 バラエティで活躍、優しくて気遣いの鬼、メンカラ群青
 
 .阿久津慧(32歳)
 知識派インテリア、朝の番組で活躍、メンカラ青磁
 
 .藤倉涼真(31歳)
 スタイル抜群でモデル兼任、末っ子気質、メン カラ白群
 
 .黒瀬一真(33歳)
 クール系センター、俳優方面で活躍、メンカラ漆黒
 
 .咲良大輝(33歳)
 明るく元気、アニメ好き、ダンスが得意、メンカラ薄紅
 
 
私が知っているのはグループの名前くらいだった。
同じ時代を生きている普通の男の人たちそう言う認識だけ。
 
ほんの少しのきっかけでまさかこんなことになるとは……

 ――――――――――――
私の名前は月田りな(40歳)、独身。
 恋愛はしばらくお休み中〜、化粧(伊達メガネで隠してるの)も洋服も気にせずに最近は生きています(てへっ)。
 
 元々料理の仕事をしていたけど、親が倒れたのをきっかけに今は介護士の仕事をしてます。

1か月前、調理の仕事をしていた先輩が人が足りないと泣きついてきて休日にお店の手伝いや弁当の仕出しの手伝いをしてます。
 今日はバイトが休んじゃったからって某テレビ局に仕出しのお弁当を届けに来ました。

 初めはそんな気にする事もなく挨拶をして確認して帰るただそれだけだったのに……。
 何回か届けるうちにたまたまマネージャーの鶴田さんと話すようになった。
 
鶴田「素朴な懐かしい味がメンバーに好評でね…ENNEって言うんだけど知ってる?」
 
りな「……すいませんテレビとか疎くて、でも!名前は存じ上げてますよ?いつもありがとうございます、またお願いします!」
 
 そんな業務的な会話だった。 
ある日……
 
輝晶「こんにちは!今日の弁当の中身なんです?笑」
 
 話しかけて来たのはENNEリーダー、陽向輝晶(34歳)だった。
 
りな「毎度ありがとうございます、今日は洋食ですよ?笑 エビフライですかね」
 
輝晶「うわぁ笑 美味そう!」
 
りな「食べてください笑 ありがとうございました!」
 
 お辞儀をして帰った…ただの挨拶程度の会話。
 それが何回か続くと行く度に誰かが声をかけてくれるようになった。
 初めは同じ誕生日という事で輝晶くんとよく喋ってたんだ。
 それからメンバーの皆とも一言二言話すようになっていた。

 いつもお弁当の中身や今日の天気や気温なんか……そんな世間話程度。
 でもね……まさかその内の1人が未来のだんな様になるとは……この時は夢にも思わなかった。
 まだこの時は特別な感情も何も、メンバーのフルネームさえ知らなかった。

 本当に未来は……分からないものね。

 
【メンバーside】
 
遥斗「今日月一の弁当の日だっけ?」
 
輝晶「そうだよ、楽しみ♪」
 
涼真「あの子が来るからだろ〜輝晶君お気に入り?笑」
 
一真「中身も手伝いで作ってるって聞いた……料理出来ていい子なんて最高じゃん」
 
慧 「いい子って年上でしょ笑」
 
大輝「なんか見えないよねぇ笑」

 
 ある日仕出しの帰りにTV局を出ると急な大雨でりなは立ち往生していた。
 ため息をついてるとメンバーの1人咲良君が傘を持ってきてくれた。
 
大輝「返さなくていいよっ!」
 
りな「でも来月も来るからその時に返します笑」

 なんて他愛もない会話をして笑い合う。
 お互いにふわっと笑う仕草に少し胸がときめいたのを覚えてる。

 
とある月にたまたま撮影のエキストラの人数が足りず駆り出される事に。
「お願い!」輝晶君に言われて渋々OKを出す。
 縁日のセットでENNEが夏祭りに来てるという設定らしい。
 浴衣姿で彼らとすれ違うという役?そんな大層な役でいいの?笑そう思いつつ引き受けた。

 久々に浴衣を着ると背筋がシャンとした、少しだけメイクとかやってもらう。
 この時にメイクスタイリストのきょんちゃんとも出会ったんだよね〜。
 今や凄腕の人なんだけどね笑

 一通りの説明を受けて友達役のエキストラの人とスタンバイする。
 スタートの合図で前からわちゃわちゃと歩いてくる。
 一瞬目が合うから少し微笑むとメンバーの皆がびっくりしていた。
 
りな「(えっ?なんかまずいの?)」
 
 と思いながら側を通り過ぎると……
 
監督「カット! おーい笑一斉に振り向く所じゃないよ笑」
 
 振り返るとメンバー全員がこちらを見ていた。
 私は「?」と不思議な顔をして隣のエキストラの人を見ると同じ顔をしていた。
 同じシーンをもう一度撮り終えて鶴田さんにお礼を言われて着替えに行く。
 
りな「(大変だな……芸能人って……)」
 
 着替え終わって廊下に出ると涼真くんに会った。
 
涼真「あ!!りな姉!めっちゃ浴衣似合ってた!」
 
 照れながら「ありがとう。」とお礼を言う。
 
涼真「皆も見とれてたんだよ?」
 
りな「まさか笑でも嬉しかったからお礼言っといて?じゃね!」
 
 とその場を離れる。
 
りな「(しばらく来れないんだよね…楽しかったな!いい思い出ができた笑)」
 
 そう思いながらりなはTV局を後にする。

 
 【メンバー side】 
遥斗 「……いやぁびっくりした笑」
 
一真 「うん、びっくりした……」
 
輝晶 「浴衣似合ってたよね……可愛いって言うよりキレイ……」
 
慧 「浴衣似合う人っていいよね♪」
 
大輝「……衝撃的」

―――――――――――――――

   2ヶ月くらい弁当弁当の方を手伝うこともなく日常生活を送っていた。
 ある日先輩から「ご指名で来て欲しい」と連絡が来る。
 
りな「(え?弁当に指名ってあるののかな?まぁ喜んでくれてるならいっか)」
 
 と思いながら空いてる日を伝える。
 久々にメンバーに会えると思うと楽しみな自分もいた。

 【メンバーside】 
遥斗「最近見かけなくね?」
 
輝晶「もう来ないのかな…(拗)」
 
一真「何か物足りないんだけど」
 
慧 「別に顔みたいなんて思ってねーぞ?忙しいし……」
 
涼真「え?俺りな姉のご飯食べたいし話したい」
 
大輝「うん、会って話したいねぇ……」

涼真「指名すれば来るんじゃない?」
 
 と言うのでみながそれに賛成した。
鶴田マネにお願いして聞いてもらうと「来週の金曜日に来てくれるそうです」と返事が来た。
 皆が嬉しそうな顔をする中
 
???「(久々に会えるんだ………なんでそんな事思うんだろ?)」
 
 とそんな事を思う人がいた。

―――――――――――――

 《金曜日》
「こんにちわ××弁当です」とスタッフに声をかけると丁度鶴田さんが現れる。
 
鶴田「お久しぶりです、すいません指名なんて笑丁度良かった…僕だけ話してると怒られるので良かったらメンバーと会ってやってください笑」
 
りな「いえいえ笑でも皆さん忙しいんじゃないですか?」
 
鶴田「そのまま帰すと怒られますので笑どうぞ」
 
りな「すいません私業者側なのに……」

 
 案内されるとメンバーがダンスの練習をしていた。
 (こっそりこちらへ……)と端の方に案内してくれる。
 しばらくする輝晶君が気がついた。
 
輝晶「休憩するよ!……りな久々だね!こっちおいで笑」
 
りな「お邪魔します……」
 
 とメンバーの近くに行く。
 皆が笑顔で迎えてくれる。
 
りな「お弁当持ってきたので。毎度ありがとうございます」
 
遥斗「元気だった?」
 
りな「元気でしたよ?皆さんは体調大丈夫ですか?」
 
 なんて世間話する。
涼真君が突然「ねぇ!!りな姉にここで直でご飯作ってもらうのとかありなの?」と聞いてくる。
 一応調理師免許持ってるけど……国民的アイドルにご飯なんて作れませんよ……
 急にぶっ込んでくる末っ子発言の涼真君に唖然とする。
 
涼真「慧君とここでおにぎりとか作って欲しいなぁ」
 
 涼真の発言に鶴田さんも頭を抱えてる。
 
りな「涼真君ダメだよわがまま言ったら」
 
 とたしなめると何故か皆も乗り気で……
 
鶴田「確認してOKならお願いできますか?」
 
りな「はぁ……まぁタイミングが合えば……」
 
 慧「りなさん一緒に作ろ?俺も喜ぶし笑」
 
りな「慧君は止めてくれると思ってたいたよ……」
 
 呆れた目を向けてると鶴田さんからOKの声がかかる。
 
鶴田「細かいやり取りは後ほど、でもOK取れたので月1回でお願いします!(メンバーの士気に関わるので!こそ)」
 
りな「(呆れ顔で)何かOK貰っちゃったけど良いの?そんな大層なもの作れないよ?」
 
「「「「「「全然いい!!」」」」」」
 
りな「わかりましたおつるさんに連絡すればいいですか?」
 
鶴田「はい、じゃぁLINE交換しますか個人ですけど」
 
慧「何なら俺個人のLINE教えたげるよ?りなならいいし、メニュー決めたりしたいしね!」
 
 と慧君が言うとメンバーから
 
「「「「「ずりーぞ!」」」」」
 
 と声が上がる。
 
鶴田「……平和のために僕にください……(溜息)」
 
りな「…………仕事増やしてすいません……」
 
 全員と友達登録し、やり取りは基本鶴田さんに。
 
りな「慧君来月何にする?ってか時間あるかな?」
 
慧 「時間空けるよ?りなと一緒に作りたいし笑」
 
 和気あいあいとみんなが食べたいものをノートに書いていく。
 そんな場面を見て少し面白くなさそうな顔をする大輝。
 
??? 「(なんで俺モヤモヤしてんだろ……?)」

 
 何ヶ月かそんな事をしてるとみんなと仲良くなる。
 ご飯のお誘いも来るわけでタイミングが合えば極たまに一緒にご飯を食べたりしていた。
 前に比べたら普通の友達のようにメンバーと接するようになっていた。

 【メンバー side】 
輝晶「ねぇ……りなって鈍い?笑」
 
遥斗「固いよねぇ笑」
 
慧 「でもあれは気づいてないよね笑」
 
一真「やっぱりストレートに言うしかなんじゃない(男気)」
 
涼真「変なとこ鋭いし気がつくのにね笑」
 
大輝「好きになったら一途なのかもね〜」

 ――――――――――――――――――

  【大輝 side】
 いつの間にか忙しいながら月日が経つ。
 月一で来てくれるあの人が気になりだしたのはいつの頃だろう。
 8個も年上のくせに全然疎いし、のんびりだし、マイペース笑
 でも知らない事を知ろうとしてくれたり、俺のアニメの話も嫌な顔せず聞いてくれたりしてくれる。
 すげぇ嬉しい。
 ご飯も美味いし、何より一緒にいると安心する。
 生涯一途なアニメがあるって聞いて、きっと恋人も一途に想ってくれる人なんだなと思う。
 惚れられた人が羨ましい笑
……しかしメンバーもりなを気に入ってるし……
 ライバル多いな笑
 まだ自覚がない小さい感情
 本気で好きになる予感……
 20年に一度大恋愛があるかもテレビ出演の際に占い師にと言われた恋……もしかしてあの人なのかな?

 
 【りな side】
 なんか皆優しく接してくれるし、面白い笑
 気を使ってくれるのかな?いい子たちだ。

 ただりなは鈍感なだけだった。

 そんなほとんど皆の気持ちに気づかず時間が過ぎていった。
 
――――――――――――――――――

  ある日――
 いつも明るく元気な彼がとても静かに端に座っていた。
 何となく気になり声をかけに行く。
 
りな「大輝君?どうしたの?元気ないね、疲れてるのかな?」
 
大輝「えっ……あ……うん、ちょっとメンバーに迷惑かけちゃって……なんでもないよ?」
 
りな「そっか……でも大丈夫じゃなさそう笑……良かったら聞くよ?」
 
大輝「ありがとう……今ネットニュースになってる事なんだけど……知ってる?」
 
りな「うん、今知った笑……携帯見てもいい?」
 
大輝「良いけど……知られたくないなぁ……(苦笑)」
 
りな「…………………………」
 
大輝「…………………………」
 
りな「…………なるほど大輝君の好きな人なんだね?彼女さんなのかな?笑」
 
大輝「違うの!本当に推しの人だったんだけど……周りからみたら今回の事ってそう見える……?」
 
りな「うーん少なくとも私にはそう見えたかな?この写真の角度は笑」
 
大輝「恋愛とかの好きじゃないんだよ……本当に……それに誤解されたくない人いるし……推しの好きはまた別なのよ……」
 
りな「まぁ大輝君が好きならいいんじゃない?諦めないでアタックしてきなよ笑」
 
大輝「…………いやわかってないよね?笑」
 
りな「何となく?笑……でも誤解されたくない人がいるって事が重要なんじゃないの?ちゃんと好きな人がいるならそう伝えた方がいいんじゃない?」
 
大輝「……まぁそうかも。でも気になる人って相当なニブチンなんだよ笑」
 
りな「そうか〜……伝わるといいね、大輝君の気持ち」
 
大輝「………………(にぶい!)」
 
りな「でも元気印が元気ないと私も心配しちゃうよ?」
 
大輝「…………本当?」
 
りな「うん、だからこうやって近くに来てるでしょ?笑」
 
大輝「えー……じゃぁ元気出すからお願い聞いて?」
 
りな「できることならいいよ」
 
大輝「……膝枕して?そしたら元気出るかも?」
 
りな「……ぷっ笑 そんな事でいいの?別にいいよ?どうぞ」
 
大輝「いいの!?やったぁ!」
 
 とすぐさまごろんと寝転がる大輝。
 
りな「こんなんで元気出るなら嬉しいよ笑」
 
 と頭を撫でてあげる。
 
大輝「あー…………落ち着く……。気持ちいい……元気でそ……」
 
 ほんの数分満たされた気持ちになる。

遥斗「あ!おい大輝!何やってんだよ!」
 
 とメンバーに見つかりやいやい言われる。
 
大輝「やべっ笑見つかっちった笑りなありがとう、元気出た!頑張るね」
 
 そういう彼の笑顔を見送る。
 その笑顔に不覚にも少しときめく。
 
 8歳も年下の男の子にドキドキするなんておかしいだろうと自分でも思う。
 でもそれからというものTVで元気な彼を見つけることが多くなった。
 ENNEの番組をチェックしたりするようになった自分に驚く。
 でもTVの向こうにいる彼を見ると自分も元気がでる。
 ふと(そういえば好きな彼女はどうしたんだろう?)と思うと胸がチクリと痛む。
 
りな「(好きな人がいるのに……8歳も年下なのに……)」
 
そんな気持ちを持ちながら月イチの仕出しに向かう。

 

 後編へ……
< 1 / 2 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop