クズなキミからの不適切な溺愛
私は立ち上がると彼が隠した手を確認する。

「あ、光莉さん、ちょっと……っ」

「……やっぱり……」

案の定、彼の左手にはいくつか絆創膏が貼られていて血が滲んでいる。

「料理したことなくて……カッコ悪いですね」

「ううん。そんなことない」

そう答えると、彼の一生懸命おかゆを作る姿が浮かんできて涙が溢れ出す。

「ぐす……吉良くん……」

「え……ちょ、何で泣くんすか?」 

「だって……っ」

「もしかして、熱ぶり返した? しんどい?」

私は止まらなくなった涙をそのままに首を振ると、彼をぎゅっと抱きしめた。


「ごめんね……私のために……ぐす……怪我までして……」

「あ、びっくりした。そっちですか。熱は大丈夫ってこと?」 

頷けば彼が安堵の表情を浮かべた。

「良かった。じゃあ泣かないで」

彼が優しく私の頬に触れながら、涙をそっと指先で拭う。

「いつも元気でよく笑う光莉さんが好きだから。早く良くなって、夏祭りいこ」

優しく微笑む彼の笑顔に愛おしい気持ちが溢れて、どうしようもなくなってくる。

「吉良くん」 

「ん?」

私は彼の首に両腕を回して、うんと背伸びをすると、頬に触れるだけのキスをする。

「ありがとう。大好き」

「……っ」

私からキスをしたのは初めてだったからだろうか。

彼が物凄く驚いた顔をするとすぐに顔を逸らし、前髪をくしゃりと握った。

「やっば……」

「え?」

「……ほんと、俺ばっかドキドキさせられんですけど」

「そうなの?」

「その反応だと、やっぱ無自覚ですよね。はぁあ。マジで本当キツいんですけど」

「どういう……意味?」

「だから、俺の方が好きだなってことです」

「……きゃっ」

私がその言葉の意味を理解する前に吉良くんが私を抱きかかえると、あっという間にキスを落とした。

「か、風邪移っちゃうよ」

「仕返ししないとやってらんないすからね」

真っ赤になった私を見ながら、彼が意地悪く笑う。

その意地悪な顔も愛おしくて、ずっとこれからも彼の隣にいたいと素直にそう思える。

彼がそっと私を下ろすと、切長の目を優しく細めた。

「じゃあ俺特製、たまごがゆ食べますか」

「うん」

私はいただきますをすると、彼の愛情たっぷりのお粥にお腹も心も満たされた。

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