クズなキミからの不適切な溺愛
挨拶をしてきたのは今、我が社のエースと期待されている、入社二年目の吉良恩志(きらおんじ)くんで私の部署の後輩だ。

シゴデキで芸能人顔負けの容姿とその名前から、社内の女子社員達は彼を『キラ王子』と呼んでいる。


「吉良くん、今日は早いね」

「そうですね。ちょっと私用で」

吉良くんはいつも通り端正な顔をこちらに向けると、眠そうな目をこすりながらそう答えた。

(私用?)

「……そうなんだ」


いつも彼が出社してくるのは就業時間の五分前だが、私より早いと言うことは三十分より前から此処にいたということだ。

一瞬、私用の意味を聞こうかとも思ったが、私には関係ないことだと一人で納得する。

彼は仕事もできるしコミュニケーション能力も抜群。同僚として後輩としてはなんの問題はないのだが……。



「聞かないんですか?」

「なにが?」

「なんで俺が出社早いのか」

「聞いて欲しいの?」

「あはは。そんな目で見られたら言いにくいですね」

吉良くんは緩めていたネクタイをきゅっと締める。そのネクタイは昨日、彼がつけていたものを同じものだ。


(あ。なるほど、家に帰ってないのね……)
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