クズなキミからの不適切な溺愛


俺は光莉さんと別れると、ぽっかり浮かんだ満月を見ながら夜道を歩いていく。

(実にやばかった)

このヤバいの意味は何通りもあるのだが、いくつかを挙げるとしたら、手料理、エプロン姿、部屋の中の甘い香り、そして頭に触れた時の彼女の表情だ。

戸惑いながら恥ずかしそうに頬をわずかに染める彼女に俺の理性はすぐき崩壊しそうになる。


(よくぞ、ほっぺで思い止まったよな)

何もしないつもりで部屋を訪ねたくせに、帰る間際は名残惜しさと愛おしさでついキスをしてしまった。


俺はぴたりと足を止めると、彼女にメッセージを送信して、もう一度アパートを見上げた。

(大丈夫そうだったけどな)

俺からしたら犬井などバカで愚かでクズ以外の何者でもない。しかし彼女にとって犬井は二年も交際した男で、浮気され別れたと言っても完全に気持ちが消滅した訳ではないはずだ。

人の心も想いも思い通りにはならないから。


だからせめて彼女が一人で泣いたりしないように支えたい。

(早く、俺を好きになってよ)

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