さくらびと。 蝶 番外編(1)
第10章 1年後の再会と青い蝶
千尋さんの死から、一年が経った。
桜の季節が、再び巡ってきた。しかし、私の心は、まだあの日の悲しみから、完全に抜け出すことができていなかった。
看護師としての仕事は、相変わらず忙しく、患者さんたちに囲まれて日々を過ごしていた。
それでも、ふとした瞬間に、千尋さんのことを思い出しては、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
彼女の部屋にあった、折り紙の鶴。あの一冊のノート。それらは、私の中で、まだ色褪せることのない、大切な記憶として残っていた。