家族になった来栖くんと。
「ほ、……ほくと、くん」
「………ごめん、聞こえなかった。車がちょうど通ったから。もう1回いい?」
………通ってないです。
付け足すなら、たった今自転車が通ったくらいです。
「ほくと…くん」
「…ごめんねー。カラス鳴いたわ今。もう1回だけいい?」
………鳴いてないです。
かろうじてスズメが電柱に留まってるくらいです。
そこまでして名前を呼んでほしい彼に、ちょっとだけ母性のようなものがうずいた。
「…ふふ。北斗くん」
人通りのない住宅地の、脇道。
そっと触れてきた手と近寄った影に見上げると、どこか照れくさそうな顔をした人気者さんがいた。
「……俺のこと、下手くそって思った?」
「お、思ってないよ…?」
「ダサいって思った?ヘタレって思った?」
「えっ、自己肯定感どうしたの…?」
さっきまであんなに語ってたのに…。