家族になった来栖くんと。




ないよ、そんなの。
ばかじゃないの。


涙ばっかり溢れて、抵抗するチカラが出ない私も。


トラウマなはずなのに。

ボタンを外される動作さえ、恐ろしくてたまらないはずなのに。



「あ…っ、そこ……だめ…」



来栖くんにしか聞こえない距離で甘い声が立つたびに、私の身体がのけ反るたびに、彼は見たこともない眼差しを落としてくる。

不慣れに精いっぱい抱きしめてくれたあの頃とは、何もかもが違うね。


その奥にある決定的な熱にまみれた温かさなど、見ないふり。



「…白山さんは襲われたんだ」


「っ、ぁ…っ、や…だっ」


「こんなサイテーでクズな元カレに。…俺に、襲われたんだよ」



上書きするつもりなんだ───…。


見知らぬ男たちに触れられた部分を、汚れた記憶を、ひとつひとつクズな元カレで塗り替えることは可能だろうと。

まだそっちのほうがいいだろう、と。


俺だけを責めて、俺だけを恨めばいい。


そんな不器用すぎる優しさが、悔しいくらい心と身体に溶けていく。




「汚れてなんかない。汚くなんかない。白山さんは────……ずっと綺麗だ」




私が求めていた言葉を言ってくれたのが、自分勝手に私を襲ってきた元カレだなんて。

何よりその言葉が、それだけが、私の苦しみを消してしまったなんて。


こんなにも皮肉な話はない。



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