氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 何しろ子供の頃からの付き合いだ。エーミールの黒歴史と言えるエピソードは枚挙(まいきょ)(いとま)はなかった。
 その点ではヨハンも似たり寄ったりなので、思わずヨハンはエーミールに同情してしまう。もちろん口に出したりはしないが。

「ヨハンもよ! いいわね、ふたりとも!」

 お互い、アデライーデの無茶(むちゃ)()りに振り回された記憶が山ほどある。思わずふたりは「「はいぃっ」」と背筋をのばして返事をした。
 シンクロ(りつ)(ひゃく)パーセントの返しにアデライーデは満足そうに頷いて見せたが、一抹(いちまつ)の不安はぬぐえない。

(ヴァルトもどうしてこの凸凹(でこぼこ)コンビを選ぶんだか。ユリウスにでも頼めばよかったのに)

 エーミールの叔父であるユリウスを思い浮かべ、アデライーデはああ、とひとり納得した。
 考えてみれば三人はみな独身男だ。ユリウスはリーゼロッテの父親と言ってもいいくらいの年齢だが、遊び人で経験豊富なユリウスにはリーゼロッテを任せたくなかったのだろう。

 かといってエーミールかヨハンのどちらかひとりにまかせるのも、若い男と万が一がおきてはと、ジークヴァルトは不安に思ったに違いない。

 エーミールは性格はともかく顔だけはいいし、ヨハンは昔からとにかく()れっぽい。そんなふたりがお互い、いい牽制(けんせい)になると考えたのなら、この人選も頷けるというものだ。

「まったく……男ってほんと馬鹿ばっかり」

 いきなり口をついて出たアデライーデの暴言(ぼうげん)に、エーミールとヨハンは訳も分からず、めずらしく仲良く目を合わせたのだった。

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