氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
促されてリーゼロッテは再びソファの上に座りなおした。その横にアンネマリーも腰かける。
「アンネマリー、誕生日には素敵なブローチをありがとう。今日もつけてきたのよ」
胸に輝くのは、小さな花をモチーフにした可愛らしいブローチだ。リーゼロッテのシンプルなドレスによく似あっていて、最近では毎日のように身に着けていた。
「思った通りリーゼによく似あってる。隣国でそれを見つけた瞬間、これはリーゼの胸で輝くために作られたと思ったの」
アンネマリーは目を細めて満足そうに頷いた。その様子はジルケが言うように、落ち込んでふさぎ込んでいるようには見えなかった。
「アンネマリーはどう? ……その、王城から帰ってきてからの毎日は……」
リーゼロッテの遠回しな言いように、アンネマリーは少し困ったように微笑んだ。
「お母様ね? あれこれ探りを入れられたのではない?」
「いいえ、ジルケ伯母様はわたくしに何も聞いてこられなかったわ。ただアンネマリーを心配されて……でも、わたくし王城でのことは、何もお話ししていないわ」
アンネマリーが王子に恋心を抱いていることはわかっていたし、王子もまたアンネマリーを好ましく思っていることは、リーゼロッテから見ても明らかだった。
しかし身内に対してとはいえ、それをリーゼロッテの口からべらべらと話すわけにはいかないだろう。アンネマリー自身が話していないのならなお更だ。
「そう……ありがとう、リーゼ……王子殿下のこと、黙っていてくれて……」
アンネマリーは消え入りそうな声でそう呟いた。
その手のことに疎いリーゼロッテにもわかったくらいだ。王子のそばにいるジークヴァルトやカイがそれに気づかないわけはないだろう。
だが、ふたりの口からそのことが話題になることは一度もなかった。
(やっぱり龍の託宣があるから……)
「アンネマリー、誕生日には素敵なブローチをありがとう。今日もつけてきたのよ」
胸に輝くのは、小さな花をモチーフにした可愛らしいブローチだ。リーゼロッテのシンプルなドレスによく似あっていて、最近では毎日のように身に着けていた。
「思った通りリーゼによく似あってる。隣国でそれを見つけた瞬間、これはリーゼの胸で輝くために作られたと思ったの」
アンネマリーは目を細めて満足そうに頷いた。その様子はジルケが言うように、落ち込んでふさぎ込んでいるようには見えなかった。
「アンネマリーはどう? ……その、王城から帰ってきてからの毎日は……」
リーゼロッテの遠回しな言いように、アンネマリーは少し困ったように微笑んだ。
「お母様ね? あれこれ探りを入れられたのではない?」
「いいえ、ジルケ伯母様はわたくしに何も聞いてこられなかったわ。ただアンネマリーを心配されて……でも、わたくし王城でのことは、何もお話ししていないわ」
アンネマリーが王子に恋心を抱いていることはわかっていたし、王子もまたアンネマリーを好ましく思っていることは、リーゼロッテから見ても明らかだった。
しかし身内に対してとはいえ、それをリーゼロッテの口からべらべらと話すわけにはいかないだろう。アンネマリー自身が話していないのならなお更だ。
「そう……ありがとう、リーゼ……王子殿下のこと、黙っていてくれて……」
アンネマリーは消え入りそうな声でそう呟いた。
その手のことに疎いリーゼロッテにもわかったくらいだ。王子のそばにいるジークヴァルトやカイがそれに気づかないわけはないだろう。
だが、ふたりの口からそのことが話題になることは一度もなかった。
(やっぱり龍の託宣があるから……)