氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「いいえ、あいにくとわたくしは龍の祝福は持っていないわ」
「そう……あざはないのね……」

 かぶりを振るアンネマリーにリーゼロッテは落胆(らくたん)の色を示した。今にも泣きだしそうなリーゼロッテに、アンネマリーはそっと微笑んだ。

 リーゼロッテがなぜそんなことを聞いたのかはわからないが、自分を心配してくれていることはよくわかる。
 母親のジルケにしてもそうだ。王城で何があったのかを、無理に聞き出そうとすることはなかった。落ち込む自分に何かを言いたげにはしているが、それでも我慢(がまん)(づよ)くじっと見守っていてくれている。

(このまま落ち込んでばかりいても仕方ないわね……)

 アンネマリーは気持ちを切り替えるように、一度静かに瞳を閉じた。

「……ねえ、リーゼロッテ……わたくしね、王子殿下が好きだったの」

 ぽつりと言うアンネマリーは寂しげで、だが、どこか(ほこ)らしげにも見えた。

「すごくすごく……大好きだった……」

 はるか遠く、(なつ)かしいものを見るように、アンネマリーは言葉を切った。

「アンネマリー……」

 リーゼロッテの瞳からもりもりと涙がせりあがってくる。それを見たアンネマリーは少しだけ目を見開いた後、ふっと微笑んでリーゼロッテのまなじりに手を伸ばした。

「ばかね、どうしてリーゼが泣くの」

 こぼれ落ちる涙をやさしくぬぐい取る。

「だって……だって、アンネマリー……」

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