氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
(これは、あれよね……この前のベッティと同じで、わたしから漏れ出てる力のせいで、エーミール様も気持ち悪くなってるのよね……)

 自分から発せられる力にあてられると、他の人間は気分が悪くなるらしい。エマニュエルは馬車では大丈夫そうだったものの、言われてみれば彼女も力の制御の訓練時に気分が悪くなっていたではないか。

(ろくに異形の浄化もできないし、なんて役立たずな力なのかしら……)

 自分のふがいなさにリーゼロッテは悲しくなってきた。せめて今自分ができることはと思考を巡らせ、隣に座るジークヴァルトの(そで)にそっと触れた。

「……あの、ヴァルト様、少し窓を開けてもよろしいですか……?」
「酔ったのか?」
「いえ……わたくしではなくて……」

 気遣うようにエーミールに視線を向ける。それに気づいたエーミールは、はっとなって慌てたように口を開いた。

「いや、わたしなら何も問題は……! ジークヴァルト様、目的地には(ほど)なく到着します。ご心配は無用です」

 真っ青な顔をしたエーミールの言葉に、ジークヴァルトは「そうか」とだけ返した。

 リーゼロッテの気にやられているのなら、窓を開けたところで何も状況は変わらないだろう。先ほどからエーミールの様子に気づいてはいたが、本人が何も言わないのなら口をはさむ必要もあるまい。そう思って黙って見守っていたのだ。

「ダーミッシュ嬢は本当に大丈夫なんだな?」
「はい、わたくしは何も問題ありませんわ」

 疑うような視線を向けられ、リーゼロッテは安心させるように笑みを作った。何しろ公爵家の馬車は座り心地もよく、すこぶる快適だ。

(もっとちゃんと力の制御ができるようにならなくちゃ……)

 ひとりでは何もできないうえ、迷惑ばかりかけ続けている。ここら辺で何とか打開しておかないと、そのうちみなに呆れられて、いずれは誰からも見放されてしまいそうだ。

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