氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「あとご挨拶を控えているのは、子爵家が三人で、伯爵家と侯爵家がおふたりずつね」
「そう言えば、ランド侯爵様のご令嬢が今年のデビューを見合わせたという話はご存じ?」
「ええ、わたくしも耳にしたわ。でもランド家でご不幸があった話は聞かないけれど……」
成人を迎える十五の年でデビューを果たす者が大半だが、家の事情でデビューを遅らせる貴族も中にはいる。その理由は、身内の不幸だったり経済的事由だったりと様々だ。
だが上位貴族では少々事情が異なることもしばしばだった。
「ほら、今年はダーミッシュの妖精姫がデビューされるでしょう? なにしろランド侯爵様は大事な一人娘を溺愛なさっていますもの。デビューを華々しくするためにも、準備を万全になさりたいのね」
要は話題をさらうような令嬢と一緒にデビューさせたくないのである。
できることなら自分の子供を主役にしたい。そう思う親馬鹿な貴族は少なからずいる。
「良縁を逃すまいと勇み足でデビューなさる家も多い中、さすがランド侯爵様ですわね」
婚約者のいない令嬢を持つ親は、王太子妃の座を巡ってしのぎを削っている。その戦いに参加するために、わざわざ違約金を払ってまで婚約を破棄する家もあるくらいだ。
それに男爵位以下の貴族は、親の爵位があるうちにどこかの貴族と縁続きになりたいと思う者がほとんどだった。王太子妃にはなれなくとも、親子ともども婚活に熱が入るのはしごく当然のことだろう。だがそれをあさましいと感じる上位貴族の態度は冷ややかだ。
「あら、子爵家のご挨拶も無事に終わったみたい。あとは、ブラル伯爵家とダーミッシュ伯爵家、キュプカー侯爵家、それにクラッセン侯爵家の四家のを残すのみね」
デビュタントにそれほど興味を示していなかった貴族も、ブラル伯爵の名が呼ばれるとみながそちらに視線を送った。見事な縦ロールの令嬢が父親にエスコートされて入場してくる。
「ブラル伯爵家のイザベラ様ね。伯爵夫人に似てお美しいご令嬢だわ」
「あのドレスはマダム・ヤンディールのデザインよ。同じフリルの多いドレスでも、こうも上品に仕上げてくるなんて。伯爵家ともなるとやっぱり格が違うわね」
「そう言えば、ランド侯爵様のご令嬢が今年のデビューを見合わせたという話はご存じ?」
「ええ、わたくしも耳にしたわ。でもランド家でご不幸があった話は聞かないけれど……」
成人を迎える十五の年でデビューを果たす者が大半だが、家の事情でデビューを遅らせる貴族も中にはいる。その理由は、身内の不幸だったり経済的事由だったりと様々だ。
だが上位貴族では少々事情が異なることもしばしばだった。
「ほら、今年はダーミッシュの妖精姫がデビューされるでしょう? なにしろランド侯爵様は大事な一人娘を溺愛なさっていますもの。デビューを華々しくするためにも、準備を万全になさりたいのね」
要は話題をさらうような令嬢と一緒にデビューさせたくないのである。
できることなら自分の子供を主役にしたい。そう思う親馬鹿な貴族は少なからずいる。
「良縁を逃すまいと勇み足でデビューなさる家も多い中、さすがランド侯爵様ですわね」
婚約者のいない令嬢を持つ親は、王太子妃の座を巡ってしのぎを削っている。その戦いに参加するために、わざわざ違約金を払ってまで婚約を破棄する家もあるくらいだ。
それに男爵位以下の貴族は、親の爵位があるうちにどこかの貴族と縁続きになりたいと思う者がほとんどだった。王太子妃にはなれなくとも、親子ともども婚活に熱が入るのはしごく当然のことだろう。だがそれをあさましいと感じる上位貴族の態度は冷ややかだ。
「あら、子爵家のご挨拶も無事に終わったみたい。あとは、ブラル伯爵家とダーミッシュ伯爵家、キュプカー侯爵家、それにクラッセン侯爵家の四家のを残すのみね」
デビュタントにそれほど興味を示していなかった貴族も、ブラル伯爵の名が呼ばれるとみながそちらに視線を送った。見事な縦ロールの令嬢が父親にエスコートされて入場してくる。
「ブラル伯爵家のイザベラ様ね。伯爵夫人に似てお美しいご令嬢だわ」
「あのドレスはマダム・ヤンディールのデザインよ。同じフリルの多いドレスでも、こうも上品に仕上げてくるなんて。伯爵家ともなるとやっぱり格が違うわね」