氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「ダンス中に転倒事故に巻き込まれたとか。お怪我はなさいませんでしたか?」
「エマ様、ご心配をおかけしました。ジークヴァルト様がいてくださったので事なきを得ましたわ」
「それはよかったです。ダーミッシュ伯爵様たちも、とてもご心配されていましたから」

 エマニュエルがほっとした顔をすると、リーゼロッテはエラを見やった。

「エラ、疲れているところ悪いのだけれど、お義父(とう)(さま)たちにわたくしは大丈夫だと伝えてきてくれないかしら?」
「はい、承知いたしました。すぐにお伝えして参ります」

 二つ返事で部屋を出ていこうとするエラを一同は黙って見送る。

「エーミールもエデラー嬢についていってくれ」
「ですがわたしは……」

 ジークヴァルトの元を離れるのを躊躇(ちゅうちょ)してエーミールは渋るように言った。

「問題ない。しばらくはここにいる」

 そっけなく言ったジークヴァルトに、エーミールは仕方なしに頷いてそれに従った。エラを追いかけて部屋を出ようとする。

「エーミール、先ほどは助かった、礼を言う。……だが、エデラー嬢を振り回すのはこれきりにしてくれ」

 よろこんだのも(つか)()、ジークヴァルトにそうくぎを刺されて、エーミールは渋い顔をして部屋を出ていった。

 程なくして再び扉がノックされたかと思うと、誰何(すいか)する前に乱暴に扉が開け放たれた。間髪(かんぱつ)おかずにひとりのご令嬢が飛び込んでくる。

「リーゼロッテ! 怪我はない!?」
「アデライーデ様?」
 飛び込んでくるなりいきなりぎゅうっと抱きしめられて、ソファに座ったまま視界が塞がれた。一瞬のことで令嬢の顔を確認できなかったが、この声は確かにアデライーデだ。

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