氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「ジークヴァルト様のおかげで、わたくし、何も怪我はしませんでしたわ。お騒がせして申し訳ありません」
「遅れてやって来てみれば、ダンスフロアは騒然(そうぜん)としているし、令嬢がひとり倒れているし、リーゼロッテはジークヴァルトに抱えられているしで、ほんっとに心配したわ」
「……本当にお騒がせいたしました」

 羞恥(しゅうち)で頬が赤くなる。アデライーデによしよしと背中をさすられ、リーゼロッテもアデライーデをきゅっと抱きかえした。

「いい加減離れろ」とジークヴァルトの声がして、アデライーデの抱擁(ほうよう)が解かれる。
「まったくもう。少しくらいいいでしょ、別に」

 腰に手を当てて、アデライーデはジークヴァルトを呆れ気味に見やった。

(アデライーデ様……!)

 リーゼロッテは思わず立ち上がって胸の前で祈るように手を組んだ。

 そこにいたのは鮮やかな臙脂(えんじ)の生地に黒いレースをあしらったゴシックドレスを(まと)ったアデライーデだった。美しく髪を結い上げて、その左目には赤い薔薇(ばら)と黒いレースが施された眼帯がつけられている。

 美しすぎる。ただその一言に尽きた。目の前に立つアデライーデは、まるで等身大の緻密(ちみつ)なビスクドールのようだ。

(はうっ、グッジョブ マダム!)

 瞳の中にハートマークが飛びまくる。仮縫い時にアデライーデのドレスを見て、眼帯もゴシック調にしてほしいとマダムに頼んでみたのだ。
 似合いすぎてドキドキが止まらない。こんなレイヤーがいたら、大勢のカメコに取り囲まれること間違いなしだ。

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