氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「お嬢様、申し訳ありません。今王都は祭りの最中でして、どこの道もこんな感じで……。この通りを抜ければ混雑もましになると思いますので、もうしばしご辛抱いただけますか?」
「ああ、そういえばそんな時期だったわね」
「まあ、お祭りですの?」

 リーゼロッテの瞳がキラキラと輝き、窓の外を見たそうにうずうずしている。言われてみれば、馬車の外は、祭りに浮かれたような熱気にあふれた人々の声が聞こえてくる。

「この国で昔から催されている庶民の祭りですわ。貴族が参加するようなものではありません」

 たしなめるように言われて、リーゼロッテは慌てて居住(いず)まいをただした。しかし、馬車の外から聞こえる声に思わず耳をそばだててしまう。

「さぁあ、今年の優勝は誰の手に!? (りゅう)祝福(しゅくふく)コンテスト、いよいよ決勝戦の始まりだよぉ!」

 (あお)るような大声に、周囲からどっと()いた声が上がる。はやし立てる口笛が、あちこちで飛び交った。

「龍の祝福コンテスト?」

 こてんと首をかしげたリーゼロッテに、エマニュエルは歴史の授業の教師のように、淡々とした口調で説明した。

「龍の祝福コンテストは、生まれつきのあざ……龍の祝福の美しさを競う大会ですわ。自薦(じせん)他薦(たせん)は問わずで、色、形、大きさ、男女別に様々な部門があります。総合優勝を果たした者には、一生遊んで暮らしていけるほどの褒賞(ほうしょう)が贈られますが、そのかわり()(ずみ)などで龍の祝福をねつ造した者には重い罰則(ばっそく)が与えられます。一般投票が主ですが、祝福が人に見せにくい場所にある場合には、男性には男性の、女性には女性の、専門の資格を持った審査員が個別の審査を行います。まあ、毎年行われる平民の娯楽(ごらく)のような祭りですわ」

(ミスコン……いえ、むしろ、年末ジャン〇宝くじみたいなものかしら……?)

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