氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 なんとなく気になってダーミッシュ家のページを開いてみる。

(あ! お義父(とう)(さま)もお義母(かあ)(さま)もすごく若い!)

 当たり前のことだが、そこにはまだ自分と義弟(おとうと)のルカの名前はない。自分は三歳の時にダーミッシュ家の養子になったし、ルカが生まれたのはその翌年だ。

 ふと思ってリーゼロッテは生まれた家のページを探した。自分の記憶と実の両親の顔は一致するのだろうか?

(あった、ここだわ)

 ラウエンシュタイン公爵家。それがリーゼロッテの生家(せいか)の名前だ。ダーミッシュ家の一員としてずっと過ごしてきたので、少し不思議な気持ちがする。

「あ……」
「どうしたの?」

 不意に出た声に、カイがページをめくる手を止めて顔を上げた。

「いえ、生まれの家の当主が、その、父ではなく母になっていたので……」
「ああ、ラウエンシュタイン家は代々女性が公爵(こうしゃく)()()いでいるからね」
「まあ、そうなのですね」

 言われてみれば自分が養子に出されたあと、生家はどうなったのだろう。自分に兄弟がいると言う話も聞かないし、継ぐ者がいなくなってお取りつぶしになったのだろうか?
 カイが再び自分の作業に没頭(ぼっとう)し始めたので、リーゼロッテはそれ以上は何も聞けなかった。

(ダーミッシュ家に戻ったときにお義父様に聞いてみよう)

 そう思ってリーゼロッテはカイの邪魔にならないよう、静かにページをめくっていった。

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