氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「……申してみよ」
僅かに振り返り、ディートリヒ王はカイを見下ろした。吸い寄せられるようにカイの視線が、王の金色の瞳に縫いつけられる。
「王は、すべてを知っておられるのではありませんか?」
「なぜそう思う」
「王は、どうしてそう平然としておられるのでしょう。ハインリヒ様のお相手が見つからない現状は、国として最も憂慮すべき事態だというのは、王がいちばん理解しておいででしょうに」
ハインリヒの託宣が守られないということは、この国が破滅を迎えると言うことだ。建国以来、龍の託宣が守られなかったことは一度もない。
神殿をはじめ、この国の成り立ちを知る誰もが、右往左往している前代未聞の事態に、ディートリヒ王だけが悠然とした態度を貫いている。
「……すべては龍の思し召しだ」
静かに言い残すと、ディートリヒ王はマントを翻してカイに背を向けた。息が詰まるような静寂の中、カイは頭を垂れてその背をただ見送った。
僅かに振り返り、ディートリヒ王はカイを見下ろした。吸い寄せられるようにカイの視線が、王の金色の瞳に縫いつけられる。
「王は、すべてを知っておられるのではありませんか?」
「なぜそう思う」
「王は、どうしてそう平然としておられるのでしょう。ハインリヒ様のお相手が見つからない現状は、国として最も憂慮すべき事態だというのは、王がいちばん理解しておいででしょうに」
ハインリヒの託宣が守られないということは、この国が破滅を迎えると言うことだ。建国以来、龍の託宣が守られなかったことは一度もない。
神殿をはじめ、この国の成り立ちを知る誰もが、右往左往している前代未聞の事態に、ディートリヒ王だけが悠然とした態度を貫いている。
「……すべては龍の思し召しだ」
静かに言い残すと、ディートリヒ王はマントを翻してカイに背を向けた。息が詰まるような静寂の中、カイは頭を垂れてその背をただ見送った。