氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「お嬢様、お疲れになりましたか?」
「ええ、そうね……でも、まだやることはたくさんあるのでしょう?」
お針子たちの中でも一番風格のある年配の女性に遠慮がちに声をかけた。
彼女はマダム・クノスぺと呼ばれる貴族たちに引っ張りだこのカリスマデザイナーだ。特に若い令嬢向けのドレスを作らせたら彼女の右に出る者はいないと言われている。
社交界デビューのためのドレスを彼女に依頼する貴族は多かったが、彼女は気に入った者の依頼しか受けないデザイナーとしても有名だった。幸いクリスタはマダムとはデビュー以来の付き合いらしく、直前の依頼にもかかわらず娘のリーゼロッテのドレス作りも快く受けてもらえた。
とはいえ、リーゼロッテ以外にもドレスの依頼は受けているだろう。忙しいこの時期に時間はいくらあっても足りないはずだ。そう思うと休憩をいれてほしいとはリーゼロッテは言えなかった。
「あと十着ほど、仮縫いのドレスがございますが……そうですね、ここらで一度休憩をはさみましょうか」
マダムの言葉に一斉にお針子たちの手が止まり、さっと部屋の隅に下がっていった。あと十着と言われたリーゼロッテは気が遠くなる。そうなのだ。今回作るのは、デビューのドレスだけではないのだ。
社交界へデビューを果たすと、今後あちこちの夜会やお茶会に呼ばれることが多くなる。それを踏まえて、義父のフーゴから成人のお祝いを兼ねて、何着かドレスが贈られることになっていた。
それに便乗してジークヴァルトが贈る分も加わったものだから、今回仕立てるドレスの数は十着以上にもなった。マダムもこのくそ忙しいときに、よく依頼を受けてくれたものだ。
「ほほほ、お嬢様のような花開く前の蕾を前にすると、次から次へとインスピレーションが湧いてきてしまって、一向に手が止まりそうにありませんわ。ついつい時間を忘れてしまいますわね」
「ええ、そうね……でも、まだやることはたくさんあるのでしょう?」
お針子たちの中でも一番風格のある年配の女性に遠慮がちに声をかけた。
彼女はマダム・クノスぺと呼ばれる貴族たちに引っ張りだこのカリスマデザイナーだ。特に若い令嬢向けのドレスを作らせたら彼女の右に出る者はいないと言われている。
社交界デビューのためのドレスを彼女に依頼する貴族は多かったが、彼女は気に入った者の依頼しか受けないデザイナーとしても有名だった。幸いクリスタはマダムとはデビュー以来の付き合いらしく、直前の依頼にもかかわらず娘のリーゼロッテのドレス作りも快く受けてもらえた。
とはいえ、リーゼロッテ以外にもドレスの依頼は受けているだろう。忙しいこの時期に時間はいくらあっても足りないはずだ。そう思うと休憩をいれてほしいとはリーゼロッテは言えなかった。
「あと十着ほど、仮縫いのドレスがございますが……そうですね、ここらで一度休憩をはさみましょうか」
マダムの言葉に一斉にお針子たちの手が止まり、さっと部屋の隅に下がっていった。あと十着と言われたリーゼロッテは気が遠くなる。そうなのだ。今回作るのは、デビューのドレスだけではないのだ。
社交界へデビューを果たすと、今後あちこちの夜会やお茶会に呼ばれることが多くなる。それを踏まえて、義父のフーゴから成人のお祝いを兼ねて、何着かドレスが贈られることになっていた。
それに便乗してジークヴァルトが贈る分も加わったものだから、今回仕立てるドレスの数は十着以上にもなった。マダムもこのくそ忙しいときに、よく依頼を受けてくれたものだ。
「ほほほ、お嬢様のような花開く前の蕾を前にすると、次から次へとインスピレーションが湧いてきてしまって、一向に手が止まりそうにありませんわ。ついつい時間を忘れてしまいますわね」