氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
メジャーを手と手にぴんと張り、らんらんと目を輝かせるマダムの目が本気で怖い。エラに室内用のガウンをかけられながら、リーゼロッテはきゅっと身をすくませた。
「お嬢様、お寒いですか?もう少し暖炉の火を強くいたしましょうか?」
「大丈夫よ、エラ、部屋は十分暖かいわ」
ようやく座ることのできたリーゼロッテは、ソファの上でほっと息をついた。部屋の中は薄着のリーゼロッテに合わせて暖かかったが、作業をしているお針子たちは暑いくらいではないだろうか。
「みなこそ暑いのではないかしら?もう少し涼しくてもわたくしは大丈夫よ」
可愛らしく小首をかしげたリーゼロッテの言葉に、壁際で控えていたお針子たちに動揺が走る。
彼女たちのほとんどが平民だ。マダム・クノスぺが揃えた精鋭たちだが、貴族相手に不敬を働かないように常に気を張っているのだ。貴族令嬢は気位が高く、かんしゃくを起こされたら仕事にならない。
マダムが受ける依頼では少ないことだったが、令嬢の機嫌を損ねてしまったことが今まで全くないというわけではなかった。そんな状況で、リーゼロッテの声掛けにお針子たちは耳を疑った。
部屋が暑い寒いと文句を言われたことは幾度もあるが、自分たちを気にかける貴族など今まで会ったことがない。リーゼロッテの声掛けに返事をしてもよいのかもわからず、お針子たちは困ったように顔を見合わせた。
「ほほほ、わたしたちは慣れておりますからお気遣いは無用ですわ」
「そう? ならよいのだけれど……もし暑すぎるようなら遠慮なく言ってちょうだいね? そうそう、ジークヴァルト様に頂いた王都で流行りのお菓子があるの。とても美味しかったから、あなたたちもよかったら休憩中につまんでね」
そう言ってやさしく微笑みかけると、萎縮していたお針子たちの頬がみるみる赤く染まっていった。
「「「このお嬢様のために、最高のドレスを仕立てよう!!!」」」
その後、お針子たちの決意も新たに、仮縫い作業は滞りなく終了したのである。
「お嬢様、お寒いですか?もう少し暖炉の火を強くいたしましょうか?」
「大丈夫よ、エラ、部屋は十分暖かいわ」
ようやく座ることのできたリーゼロッテは、ソファの上でほっと息をついた。部屋の中は薄着のリーゼロッテに合わせて暖かかったが、作業をしているお針子たちは暑いくらいではないだろうか。
「みなこそ暑いのではないかしら?もう少し涼しくてもわたくしは大丈夫よ」
可愛らしく小首をかしげたリーゼロッテの言葉に、壁際で控えていたお針子たちに動揺が走る。
彼女たちのほとんどが平民だ。マダム・クノスぺが揃えた精鋭たちだが、貴族相手に不敬を働かないように常に気を張っているのだ。貴族令嬢は気位が高く、かんしゃくを起こされたら仕事にならない。
マダムが受ける依頼では少ないことだったが、令嬢の機嫌を損ねてしまったことが今まで全くないというわけではなかった。そんな状況で、リーゼロッテの声掛けにお針子たちは耳を疑った。
部屋が暑い寒いと文句を言われたことは幾度もあるが、自分たちを気にかける貴族など今まで会ったことがない。リーゼロッテの声掛けに返事をしてもよいのかもわからず、お針子たちは困ったように顔を見合わせた。
「ほほほ、わたしたちは慣れておりますからお気遣いは無用ですわ」
「そう? ならよいのだけれど……もし暑すぎるようなら遠慮なく言ってちょうだいね? そうそう、ジークヴァルト様に頂いた王都で流行りのお菓子があるの。とても美味しかったから、あなたたちもよかったら休憩中につまんでね」
そう言ってやさしく微笑みかけると、萎縮していたお針子たちの頬がみるみる赤く染まっていった。
「「「このお嬢様のために、最高のドレスを仕立てよう!!!」」」
その後、お針子たちの決意も新たに、仮縫い作業は滞りなく終了したのである。