氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
     ◇
 グレーデン家をお(いとま)するために、リーゼロッテ一行は静かな廊下を進んでいた。屋敷のメイドを先頭に、その後ろをエラとリーゼロッテがついて行く。カイはその背を追うように、少し距離を置いて歩いていた。

(カイ様は無事に任務を遂行(すいこう)できたのかしら……)

 ちらりと見やる限りでは、カイはどことなく考え込んでいるようだった。だが、これ以上は自分が立ち入るべきではないだろう。そう思って、リーゼロッテは歩く先へと意識を向けた。

 それにしても、空気の流れが感じられない屋敷だ。自分たち以外、人の気配がまるでしない。もし、時が止まったとしたら、こんな感覚に見舞われるのではないだろうか? そんなことを思わせるほど、グレーデン家は静寂に満ちている。

(ここはなんて寒いのかしら)

 先ほど会ったウルリーケを思い出し、リーゼロッテはひとりそんなことを思った。

 しばらく進むと、長く一直線に伸びる廊下へと出た。その廊下は片側がすべてガラス戸になっていて、雪が降り積もる一面の庭が目に飛び込んでくる。

 誰一人として踏み荒らすことのない、白一色の美しい庭だ。目の前に広がった突然の銀世界に、リーゼロッテは目を奪われた。
 しんしんと雪が降り積もるうつくしい庭園。風はなく、ただ雪は静かに舞い落ちる。

 その幻想的な風景に、リーゼロッテはいつの間にかその足を止めていた。

「リーゼロッテお嬢様?」
 振り返ったエラが、少し困ったように声をかけてくる。

「ごめんなさい。庭が美しくて、目を奪われてしまったわ」
 そう言って、リーゼロッテはエラの近くまで歩を進めた。それを見て取り、エラも再び歩き出す。

< 414 / 684 >

この作品をシェア

pagetop