氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
     ◇
 ふと意識が浮き上がる。見慣れない天井が目に入った。

「お目覚めになられましたかぁ?」

 聞き慣れたベッティの声がして、公爵家に戻ってきたのだと安堵(あんど)した。

「食べられそうなら、少しでも何か口になさいませんかぁ? 公爵様も王城に(とど)まって、たいそう心配しておられましたよぅ」

 その言葉にがばりと身を起こした。見回すとそこは、やはり見慣れない部屋だ。

「……ここは?」
「王妃様の離宮ですぅ」

 起こした体をみやると、いつの間にか夜着に着替えさせられていた。(くせ)のように胸元に手を伸ばすも、そこに守り石はない。いつも肌身離さずつけていたペンダントは、公爵家の部屋に置いて行ったままだ。
 お守りのような存在が手元にないとわかると、急に不安になってくる。その様子を察したのか、ベッティが元気づけるように明るい声を出した。

「ここなら歴代の王の守りが超絶(ちょうぜつ)半端ないですのでぇ、リーゼロッテ様も超絶安全! なんの(うれ)いもありませんので超絶安心してお過ごしくださいぃ」

 寝台から降りて、リーゼロッテは隣の部屋へと移動した。そこは豪華な居間だったが、どこかで見たことがある部屋にリーゼロッテは首をかしげた。

「ここはアンネマリーの……?」
「はいぃ、こちらは星読(ほしよ)みの()と言って、以前アンネマリー様が滞在されていたお部屋ですぅ。リーゼロッテ様も一度いらしたことがございましたよねぇ」

 どうしてそれをベッティが知っているのかとも思ったが、ベッティはもともと王妃の元で働いていたと言っていた。アンネマリーを訪ねた日に、ベッティもあの場にいたのかもしれない。

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