氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「……どうしてここに?」
この部屋は王妃の離宮の一室だ。離宮は王以外の男性は、基本、立ち入ることが許されない場所である。何よりそれなりに夜も遅いこの時間に、ジークヴァルトが目の前にいる。そのことにリーゼロッテはただぽかんと口を開けた。
「公爵様は今、王子殿下の自室にお泊りになっていますからねぇ。この星読みの間はもともと王太子妃用の部屋ですのでぇ、王子殿下のお部屋と隠し通路でつながっているんですよぅ」
その言葉をベッティは、いまだリーゼロッテの胸を揉みしだきながら言った。しかし、ジークヴァルトの殺気に気づくと、さっと遠くの扉へと逃げていく。
「ではわたしは隣の部屋で控えておりますのでぇ。リーゼロッテ様ぁ、どうしてもな時は大声でお呼びくださいましねぇ」
早口でそう言うと、ベッティはぴゅっと隣の部屋に消えてしまった。一応、扉は開けたままにしていったようだ。
(どうしてもな時? まあ、こんな時間にふたりきりというのも外聞がよくないものね)
貴族の世界のよくわからないルールだ。扉を少しでも開けておけば、他者が確認できるし疚しいことは何もないということらしい。
しかし、夜も更けてきたこの時間に、実際はジークヴァルトとふたりきりだ。以前、王城でも似たような場面があったが、成人した今では随分と意味合いが違ってくるだろう。
気づいてみれば自分の格好も夜着にガウンを羽織っただけの無防備なものだ。しかも先ほどベッティに揉みしだかれて、襟元がかなり乱れている。
(ま、まあ、ヴァルト様の子供扱いの前では、このくらい問題にならないのだろうけど)
そう思いつつも、あわてて襟元を整えた。ついでに小胸を悟られないように、おろした髪を胸の前にそっと集めておく。
「あ、あの、ヴァルト様。こんな格好で申し訳ありません。とにかくこちらにおかけくださいませ」
ジークヴァルトを突っ立ったままにしておくわけにもいかないだろう。ほかに世話をする人間もいないのであれば、自分がお茶くらい用意すべきだ。
この部屋は王妃の離宮の一室だ。離宮は王以外の男性は、基本、立ち入ることが許されない場所である。何よりそれなりに夜も遅いこの時間に、ジークヴァルトが目の前にいる。そのことにリーゼロッテはただぽかんと口を開けた。
「公爵様は今、王子殿下の自室にお泊りになっていますからねぇ。この星読みの間はもともと王太子妃用の部屋ですのでぇ、王子殿下のお部屋と隠し通路でつながっているんですよぅ」
その言葉をベッティは、いまだリーゼロッテの胸を揉みしだきながら言った。しかし、ジークヴァルトの殺気に気づくと、さっと遠くの扉へと逃げていく。
「ではわたしは隣の部屋で控えておりますのでぇ。リーゼロッテ様ぁ、どうしてもな時は大声でお呼びくださいましねぇ」
早口でそう言うと、ベッティはぴゅっと隣の部屋に消えてしまった。一応、扉は開けたままにしていったようだ。
(どうしてもな時? まあ、こんな時間にふたりきりというのも外聞がよくないものね)
貴族の世界のよくわからないルールだ。扉を少しでも開けておけば、他者が確認できるし疚しいことは何もないということらしい。
しかし、夜も更けてきたこの時間に、実際はジークヴァルトとふたりきりだ。以前、王城でも似たような場面があったが、成人した今では随分と意味合いが違ってくるだろう。
気づいてみれば自分の格好も夜着にガウンを羽織っただけの無防備なものだ。しかも先ほどベッティに揉みしだかれて、襟元がかなり乱れている。
(ま、まあ、ヴァルト様の子供扱いの前では、このくらい問題にならないのだろうけど)
そう思いつつも、あわてて襟元を整えた。ついでに小胸を悟られないように、おろした髪を胸の前にそっと集めておく。
「あ、あの、ヴァルト様。こんな格好で申し訳ありません。とにかくこちらにおかけくださいませ」
ジークヴァルトを突っ立ったままにしておくわけにもいかないだろう。ほかに世話をする人間もいないのであれば、自分がお茶くらい用意すべきだ。