氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「たれ目は関係ないだろう! こんなところで寝てる方が悪いんだろうがっ。ここにどんだけの男がいると思っているんだ。いつも言ってるが襲われたって文句は言えないんだぞ! 無防備にも程があるだろうっ」
「ふん、そんな度胸がある奴なんてひとりもいないくせに」
そう言ってアデライーデはようやくニコラウスの腕を離した。涙目のまま体を起こして、ニコラウスは変な方向を向いていた手をぱたぱたと振った。
「まったく、このじゃじゃ馬が。嫁の貰い手が無くなるぞ」
「余計なお世話よ。ニコ、あんたこそこんなとこにいないで、さっさと家を継げばいいでしょう?」
その言葉にニコラウスはむっとした顔した。
「爵位は妹の伴侶に譲るからいいんだよ。いつもそう言ってるだろうが」
ニコラウスはブラル伯爵家の長男である。しかし、その母親は伯爵の愛人という立場だった。一応男爵令嬢ではあったが、本妻に子供がいる以上、爵位はそちらに譲るのが筋というものだろう。本心はただ面倒ごとを避けたいというだけであったが、この際そんなことはどうでもいい。
「そんなこと言って、この前の白の夜会じゃ、令嬢たちにモテモテだったじゃない」
にやにやと言われ、ニコラウスは顔をしかめた。あの日は本当にひどい目にあった。妹が社交界デビューするとあっては、いつもは理由をつけて逃げていた夜会も、あの日ばかりは出席せざるを得なかった。
「お前はいいよな。バルバナス様と一曲踊ったら、さっさとどこかに行っちまってさ」
拗ねたように言うが、あの日のアデライーデを見て正直驚いた。どこから見ても立派な公爵令嬢だったその姿は、バルバナスにエスコートされていなかったら、最後まで誰だか分らなかったかもしれない。
「わたしはバルバナス様の令嬢除けに使われただけよ。まったくいい迷惑だわ」
不機嫌そうにアデライーデはぷいっと顔を背けた。
「ふん、そんな度胸がある奴なんてひとりもいないくせに」
そう言ってアデライーデはようやくニコラウスの腕を離した。涙目のまま体を起こして、ニコラウスは変な方向を向いていた手をぱたぱたと振った。
「まったく、このじゃじゃ馬が。嫁の貰い手が無くなるぞ」
「余計なお世話よ。ニコ、あんたこそこんなとこにいないで、さっさと家を継げばいいでしょう?」
その言葉にニコラウスはむっとした顔した。
「爵位は妹の伴侶に譲るからいいんだよ。いつもそう言ってるだろうが」
ニコラウスはブラル伯爵家の長男である。しかし、その母親は伯爵の愛人という立場だった。一応男爵令嬢ではあったが、本妻に子供がいる以上、爵位はそちらに譲るのが筋というものだろう。本心はただ面倒ごとを避けたいというだけであったが、この際そんなことはどうでもいい。
「そんなこと言って、この前の白の夜会じゃ、令嬢たちにモテモテだったじゃない」
にやにやと言われ、ニコラウスは顔をしかめた。あの日は本当にひどい目にあった。妹が社交界デビューするとあっては、いつもは理由をつけて逃げていた夜会も、あの日ばかりは出席せざるを得なかった。
「お前はいいよな。バルバナス様と一曲踊ったら、さっさとどこかに行っちまってさ」
拗ねたように言うが、あの日のアデライーデを見て正直驚いた。どこから見ても立派な公爵令嬢だったその姿は、バルバナスにエスコートされていなかったら、最後まで誰だか分らなかったかもしれない。
「わたしはバルバナス様の令嬢除けに使われただけよ。まったくいい迷惑だわ」
不機嫌そうにアデライーデはぷいっと顔を背けた。