氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「ジークヴァルトさまー、入りますよー」

 軽いノックと共にカイの声がした。応える前に扉が開かれ、カイが顔をのぞかせる。その後ろから、ハインリヒ王子がするりと部屋の中に入ってきた。
 条件反射のように立ち上がり礼をとると、ハインリヒは少し驚いたような顔をした。

「ああ、リーゼロッテ嬢も来ていたのか」
「申し訳ございません。わたくしがジークヴァルト様に無理にお願いいたしました」
「いや構わないよ」

 そう言って向かいのソファに腰をかけたハインリヒが、こちらも座るようにと促してくる。座った後に王子からまじまじと見つめられ、リーゼロッテは目を伏せたまま居心地悪そうに居住まいを正した。

「白の夜会でも思ったが、確かにカイの言う通りだな。……わかった、もう見ないから睨むのはやめろ」

 眼光鋭く睨みつけてくるジークヴァルトに苦笑を返し、ハインリヒはリーゼロッテから視線をずらした。

「ね、言った通りでしょう。リーゼロッテ嬢がおもしろいことになってるって」

 そう言いながら、カイは紅茶を差し出してくる。ふわりと芳香が広がって、以前の王城滞在の頃に戻ったような既視感を覚える。

(それにしたっておもしろいってどういうこと……?)

 不服に思いつつ、カイと王子の視線の先を見やると、いつの間にか戻ってきていた異形たちが、リーゼロッテに向けて懸命に手を伸ばしていた。近づけるギリギリのところで、あふれ出ている緑の力をつかもうと必死のようだ。

「確かに目詰まりは解消されたようだね」

 ハインリヒにそう言われ、王城での騒ぎを思い出す。あの時は自分の力が解放できないことが原因で、とんでもない迷惑をかけてしまった。

「その節はたいへんご迷惑を……」
「いや、いいよ。あれはリーゼロッテ嬢の責任ではないし、君は我が国の大事な(たみ)のひとりだ。わたしには王族として君を守る義務がある。だから今回の件も、心配せずにこちらに任せてくれないか?」

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