氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「ああ、もう、うるさいわね。いいわよ、たれ目の代わりに、わたしがグレーデン家に行ってくればいいんでしょう?」

 涙目になったニコラウスが、アデライーデのその手をぎゅっと握った。

「アデライーデ、お前、なんていいやつなんだ! だが、たれ目言うな」
「たれ目にたれ目って言って何が悪いのよ」
「痛いくらいに自覚はしてるから、余計に傷つくんだよっ」

 鼻先をくっつけそうな勢いで言い合うふたりを前に、バルバナスの目がすっと細められた。ニコラウスの顔面を鷲づかんで、アデライーデからぐいと引きはがす。

「ダメだ。アデライーデ、お前には今から休暇を与える。とりあえず、オレと一緒に公爵家に移動するぞ」
「えええ? そんな横暴ですよ! わたしだって三連休を返上して任務に赴いているのに!」

 ニコラウスが食い下がるように言う。ここで言っておかないと、もう、あとはやるしかなくなってしまう。悪あがきだとしても、今言っておかないとめちゃくちゃ後悔しそうだ。

「決定事項だ。ニコラウス・ブラル。お前は即刻グレーデン侯爵家に向かえ。命令だ」

 バルバナスの有無を言わさぬ口調に、ニコラウスは口をぱくぱくしたあと、観念したように騎士の礼をとった。

「仰せのままにっ」

(ごめん、親父。ブラル家終わったわ)
 心の中で、宰相である父にわびる。

 せめて妹にはいい嫁ぎ先を見つけなくては。いざとなったらグレーデン家に押し付けよう。


 ニコラウスは死んだような魚の目つきで部屋を出て行きながらも、そんな決意を固めていた。




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