氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
◇
「お待ちしておりました。ただいま当主は不在でして……」
「出迎えなどいい。さっさと例の異形んとこに案内しろ」
迎えられたフーゲンベルク家のエントランスで、バルバナスは面倒くさそうに片手を振った。それを横で見ていたアデライーデが嫌そうな顔をする。
「王兄殿下にして騎士団総司令の仰せよ。従ってちょうだい」
公爵家の家令であるエッカルトの視線を受けて、アデライーデは憮然と言った。バルバナスが来ることは事前に知らせておいたはずだ。当主であるジークヴァルトがいないなど、どれだけ使えない弟だ。
(大方、リーゼロッテから離れられないでいるのでしょうけど)
気持ちはわからなくもないが、このバルバナスを前にして、いかに百戦錬磨のエッカルトでも対応に苦慮するのは目に見えている。
グレーデン家でリーゼロッテが、星に堕とす者に遭遇したと聞いたときは驚きしかなかった。ジークヴァルトに対してさえ、そんなものが現れることなど一度もなかったのだ。
しかも、泣き虫ジョンが星を堕とす者である疑いがあると言われてさらに驚いた。ジョンは公爵家に何百年も前からいる異形の者だ。それだけ長い間放置されていたのは、害がないと思われてこそだった。
アデライーデも子供の頃、面白半分でジョンの元に行ったことはあったが、ただ泣いているだけのジョンはなんの面白みもなく、すぐにその存在も忘れてしまった。それが今さら禁忌の異形だと言われて、驚くなという方が無理な話だ。
(ったく、ヴァルトの奴、あとで絶対締め上げてやるんだから)
ジークヴァルトは昔から、周りから言われるがまま、やるべきことをこなしていた。淡々とそつなく、完ぺきに片付けられるそれらは、義務感や責任感から行われているようには見えなかった。
家の一大事よりもリーゼロッテのそばにいることを選んだと言うのなら、公爵位を継いだ後もその姿勢は変わらないということだろう。
(そんなところはお父様にそっくりなんだから。ほんと使えない)
「お待ちしておりました。ただいま当主は不在でして……」
「出迎えなどいい。さっさと例の異形んとこに案内しろ」
迎えられたフーゲンベルク家のエントランスで、バルバナスは面倒くさそうに片手を振った。それを横で見ていたアデライーデが嫌そうな顔をする。
「王兄殿下にして騎士団総司令の仰せよ。従ってちょうだい」
公爵家の家令であるエッカルトの視線を受けて、アデライーデは憮然と言った。バルバナスが来ることは事前に知らせておいたはずだ。当主であるジークヴァルトがいないなど、どれだけ使えない弟だ。
(大方、リーゼロッテから離れられないでいるのでしょうけど)
気持ちはわからなくもないが、このバルバナスを前にして、いかに百戦錬磨のエッカルトでも対応に苦慮するのは目に見えている。
グレーデン家でリーゼロッテが、星に堕とす者に遭遇したと聞いたときは驚きしかなかった。ジークヴァルトに対してさえ、そんなものが現れることなど一度もなかったのだ。
しかも、泣き虫ジョンが星を堕とす者である疑いがあると言われてさらに驚いた。ジョンは公爵家に何百年も前からいる異形の者だ。それだけ長い間放置されていたのは、害がないと思われてこそだった。
アデライーデも子供の頃、面白半分でジョンの元に行ったことはあったが、ただ泣いているだけのジョンはなんの面白みもなく、すぐにその存在も忘れてしまった。それが今さら禁忌の異形だと言われて、驚くなという方が無理な話だ。
(ったく、ヴァルトの奴、あとで絶対締め上げてやるんだから)
ジークヴァルトは昔から、周りから言われるがまま、やるべきことをこなしていた。淡々とそつなく、完ぺきに片付けられるそれらは、義務感や責任感から行われているようには見えなかった。
家の一大事よりもリーゼロッテのそばにいることを選んだと言うのなら、公爵位を継いだ後もその姿勢は変わらないということだろう。
(そんなところはお父様にそっくりなんだから。ほんと使えない)