氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
ジークヴァルトの自室に連れ込まれたら、使用人の目が行き届かないうえ、リーゼロッテに何をしようとも異形の者の邪魔も入らない。しかし、これはジークヴァルトに信用がないというより、父親であるジークフリートの我慢のできなさっぷりがひどすぎたせいだ。
「おい! 反逆者の一族がなぜここにいる!? しかもデルプフェルトの忌み子ではないか!」
突然、冷たく鋭い声がした。
驚いて声の主を見やると、分かれ道の廊下の角から現れたのは公爵家の護衛騎士だった。ダークブロンドの貴公子然とした細身の若い男だ。
「エーミール・グレーデン様、お控えください。この方は王太子殿下の命で王城から視察に来られた騎士様ですわ。デルプフェルト様、どうか公爵家の者の非礼をお許しください」
エーミールに向かって毅然として言った後、エマニュエルはカイに向き直り深々と頭を下げた。
「ブシュケッター子爵夫人、別に気にしてないから頭を上げて。やあ、グレーデン殿。相変わらずの色男だね」
ニコニコと笑いながらカイはエーミールを見た。エーミールの顔が不快そうにゆがむ。
エーミールはカイよりも六歳ほど年上である。どちらも侯爵家の子息だが、家格はカイのデルプフェルト家の方が上だった。カイはイジドーラ王妃の甥だ。デルプフェルト家は王妃を輩出した公爵家に縁ある家として、数ある侯爵家の中で現在最も力を持っていると言えた。
「ねえ、グレーデン殿。今からでも王太子殿下に仕える気はない? その力を埋もれさせるのはもったいないし、王城に勤務すれば、グレーデン殿ならご令嬢たちにモッテモテだよ」
「ふざけるな! わたしはジークヴァルト様に忠誠を誓った身。あの方以外、誰にも仕える気などない!」
「そっかぁ、それは残念だなー。近衛騎士の制服を着たグレーデン殿なら、たいていのご令嬢はメロメロになりそうなのに」
カイの口調は少しも残念そうには聞こえない。
「フーゲンベルク家を嗅ぎまわるなど……王妃の差し金か」
「エーミール様! 不敬ですわ」
「おい! 反逆者の一族がなぜここにいる!? しかもデルプフェルトの忌み子ではないか!」
突然、冷たく鋭い声がした。
驚いて声の主を見やると、分かれ道の廊下の角から現れたのは公爵家の護衛騎士だった。ダークブロンドの貴公子然とした細身の若い男だ。
「エーミール・グレーデン様、お控えください。この方は王太子殿下の命で王城から視察に来られた騎士様ですわ。デルプフェルト様、どうか公爵家の者の非礼をお許しください」
エーミールに向かって毅然として言った後、エマニュエルはカイに向き直り深々と頭を下げた。
「ブシュケッター子爵夫人、別に気にしてないから頭を上げて。やあ、グレーデン殿。相変わらずの色男だね」
ニコニコと笑いながらカイはエーミールを見た。エーミールの顔が不快そうにゆがむ。
エーミールはカイよりも六歳ほど年上である。どちらも侯爵家の子息だが、家格はカイのデルプフェルト家の方が上だった。カイはイジドーラ王妃の甥だ。デルプフェルト家は王妃を輩出した公爵家に縁ある家として、数ある侯爵家の中で現在最も力を持っていると言えた。
「ねえ、グレーデン殿。今からでも王太子殿下に仕える気はない? その力を埋もれさせるのはもったいないし、王城に勤務すれば、グレーデン殿ならご令嬢たちにモッテモテだよ」
「ふざけるな! わたしはジークヴァルト様に忠誠を誓った身。あの方以外、誰にも仕える気などない!」
「そっかぁ、それは残念だなー。近衛騎士の制服を着たグレーデン殿なら、たいていのご令嬢はメロメロになりそうなのに」
カイの口調は少しも残念そうには聞こえない。
「フーゲンベルク家を嗅ぎまわるなど……王妃の差し金か」
「エーミール様! 不敬ですわ」