氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
 エマニュエルが()るように(にら)みつけるも、エーミールはお(かま)いなしに続けた。

「王妃は反逆者の一族の出だ。疑うのも当然だろう。まったく、あのような家から王妃を迎えるなど、ディートリヒ王の正気(しょうき)を疑う」
「個人的には、グレーデン殿のその真っ直ぐな性格、嫌いじゃないんだけどさ。不用意(ふようい)に敵を増やすのは、悪手(あくしゅ)だと思うよ?」

 カイは変わらず笑顔を保っている。リーゼロッテはそんなやり取りを、ただハラハラと見守るしかできなかった。

 エーミールが反論(はんろん)しかけたのを、エマニュエルが(せい)した。

「デルプフェルト様のおっしゃる通りです。エーミール様の軽率(けいそつ)言動(げんどう)は、最終的には旦那様に返ってくるのだと、なぜそんな簡単なこともわからないのですか!」
「な、なにを……わたしはただ本当のことを……」

 子供を(しか)りつけるような口調に、エーミールは狼狽(ろうばい)を見せた。

「グレーデン様……どうか、ここはわたくしに(めん)じて、お気持ちを(おさ)めてくださいませんか……?」

 エーミールを真っ直ぐに見上げるリーゼロッテの瞳が揺れている。その今にも泣きだしそうな表情に、エーミールは眉根をぎゅっと寄せた。

「わかりました……今日のところは引きましょう……」

 そう言いながらもエーミールは、カイを親の(かたき)のように(にら)みつけた。

「グレーデン殿、気が変わったら、いつでも騎士団で待ってるからね」

 カイがにこやかに言うと、エーミールは忌々(いまいま)しそうに舌打ちをしてから、無言できびすを返して廊下の角へ消えていった。

「やー、色男は何をしても様になるねー」
 感心したようにカイは頷いている。

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