氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「ごきげんよう、リーゼロッテ様」

 令嬢がリーゼロッテに微笑んだ。思ったよりもハスキーな声に、リーゼロッテは反射的に礼を取った。

「お初にお目にかかります。ダーミッシュ伯爵の娘、リーゼロッテでございます」

 名を呼ばれたのに、また自分で名乗ってしまった。だが、自分は相手の名も地位も知らないのだ。どの対応が正しいのかも分からず、リーゼロッテは礼の姿勢を崩せずにいた。

 ぷっと笑い声がして、口を開いたのはハインリヒ王子だった。

「意外とばれないものだな」
「あら、このわたくしが化粧を施したのよ。それも当然のこと」

 含みを持たせたイジドーラ王妃が笑みを刷く。

「いいから顔をお上げなさい」

 王妃に言われ、リーゼロッテおずおずと顔を上げると、謎の令嬢が優雅な足取りでリーゼロッテへと近づいてきた。

「はじめましてなんて、冷たいのね」

 いたずらっぽくウィンクを返す琥珀色の瞳を前に、リーゼロッテは淑女のたしなみも忘れて目を見開いた。

「か、カイ様!?」
「はは、正解」

 目の前にいるのは確かにきれいな令嬢なのに、頭が混乱してしまう。言葉を失っているリーゼロッテを前に、カイはいつもの口調で微笑みかけた。

「オレ、昔からハインリヒ様のパートナーを務めてるんだ。王太子殿下が全く踊らないのは不自然だろうってことで」
「そう……だったのですね」
「ってことで、今日、オレのことはカロリーネって呼んでくださるかしら? ね、リーゼロッテ様」

 イジドーラに似た妖艶な雰囲気を醸しながら、途中から艶やかなハスキーボイスになっていく。目を白黒させているリーゼロッテを、カイはおもしろそうに見やった。

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