氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
◇
緊張した面持ちでリーゼロッテはその場に足を踏み入れた。扉を隔てた向こうから夜会の会場の喧騒が聞こえてくる。ここは謂わば楽屋のような場所だ。ファーストダンスを務める者が、出番が来るまで控えるための部屋だった。
豪華な調度品が置かれたそこにはまだ誰もいなかった。ジークヴァルトにエスコートされて、リーゼロッテは置かれたソファへと浅く腰かけた。ドレスにしわが寄らないように細心の注意を払う。
しばらくすると、王妃を連れたディートリヒ王が現れた。リーゼロッテは立ち上がり、隣にいるジークヴァルトと共に礼を取る。
「そうかしこまらずとも良い」
王の許しを得て顔を上げると、リーゼロッテはディートリヒ王の金色の瞳と目を合わせた。みごとな赤毛の偉丈夫だ。見た目はバルバナスと似ているのに、纏う雰囲気がまるで違う。すべてを見透かされているような視線に、リーゼロッテは慌てて瞳を伏せた。
「フーゲンベルク公爵、今日は大儀だったわね」
「いえ、これも王太子殿下に仕える者として当然の事です」
ジークヴァルトが王妃に礼を取ると、イジドーラは次にリーゼロッテへと視線を向けた。
「ダーミッシュ伯爵令嬢。今日のドレスはまた華やかね」
「お褒めにあずかり光栄でございます、王妃殿下」
リーゼロッテが礼を取ると、ハインリヒ王子がひとりの令嬢をエスコートしながら現れた。その見たことのない令嬢に、リーゼロッテは不敬になることも忘れて目を見開いた。
女性にしては背が高いその令嬢は、切れ長で琥珀色の瞳をした、どことなくイジドーラ王妃に似た印象の令嬢だった。何より、ハインリヒ王子が何事もなくその手を握っている。
(もしかして、あの方が王子殿下の託宣のお相手……!?)
ジークヴァルトが会えば分かると言ったが、そう言うことなのだろうか。
「ジークヴァルト……それにリーゼロッテ嬢も、今日は無理を言ってすまなかった」
ハインリヒにそう言われ、リーゼロッテは僅かに首をかしげた。王子が人払いをすると、部屋の中には王と王妃、ハインリヒと謎の令嬢、そしてジークヴァルトと自分の六人だけとなる。
使用人が出ていくと、ハインリヒは不自然なまでの大きな動作で、エスコートしていた令嬢から距離を取った。そんな王子を令嬢は意に介していないようだ。
緊張した面持ちでリーゼロッテはその場に足を踏み入れた。扉を隔てた向こうから夜会の会場の喧騒が聞こえてくる。ここは謂わば楽屋のような場所だ。ファーストダンスを務める者が、出番が来るまで控えるための部屋だった。
豪華な調度品が置かれたそこにはまだ誰もいなかった。ジークヴァルトにエスコートされて、リーゼロッテは置かれたソファへと浅く腰かけた。ドレスにしわが寄らないように細心の注意を払う。
しばらくすると、王妃を連れたディートリヒ王が現れた。リーゼロッテは立ち上がり、隣にいるジークヴァルトと共に礼を取る。
「そうかしこまらずとも良い」
王の許しを得て顔を上げると、リーゼロッテはディートリヒ王の金色の瞳と目を合わせた。みごとな赤毛の偉丈夫だ。見た目はバルバナスと似ているのに、纏う雰囲気がまるで違う。すべてを見透かされているような視線に、リーゼロッテは慌てて瞳を伏せた。
「フーゲンベルク公爵、今日は大儀だったわね」
「いえ、これも王太子殿下に仕える者として当然の事です」
ジークヴァルトが王妃に礼を取ると、イジドーラは次にリーゼロッテへと視線を向けた。
「ダーミッシュ伯爵令嬢。今日のドレスはまた華やかね」
「お褒めにあずかり光栄でございます、王妃殿下」
リーゼロッテが礼を取ると、ハインリヒ王子がひとりの令嬢をエスコートしながら現れた。その見たことのない令嬢に、リーゼロッテは不敬になることも忘れて目を見開いた。
女性にしては背が高いその令嬢は、切れ長で琥珀色の瞳をした、どことなくイジドーラ王妃に似た印象の令嬢だった。何より、ハインリヒ王子が何事もなくその手を握っている。
(もしかして、あの方が王子殿下の託宣のお相手……!?)
ジークヴァルトが会えば分かると言ったが、そう言うことなのだろうか。
「ジークヴァルト……それにリーゼロッテ嬢も、今日は無理を言ってすまなかった」
ハインリヒにそう言われ、リーゼロッテは僅かに首をかしげた。王子が人払いをすると、部屋の中には王と王妃、ハインリヒと謎の令嬢、そしてジークヴァルトと自分の六人だけとなる。
使用人が出ていくと、ハインリヒは不自然なまでの大きな動作で、エスコートしていた令嬢から距離を取った。そんな王子を令嬢は意に介していないようだ。