氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「過ぎる年に感謝し、来るべき新年を祝う夜会の始まりだ。今宵ばかりはすべての憂いを忘れ、存分に楽しむといい」
重い声が響くとわっと歓声が上がり、貴族たちは思い思いに動き出す。ダンスフロアにも人がなだれ込むが、一目散にハインリヒ王子に向かっていく一団が目に入った。
ハラハラしならその動きを目で追っていくと、王子とカイは既に壇上にいた。王と王妃の座る玉座の斜め後ろに立ち、耳元で何かを囁き合っている。しばらくすると、王子はカイを丁寧にエスコートしながら、王族専用の扉を出ていった。
(よかった……王子殿下は無事に退場されたみたい)
この人だかりに囲まれでもして、誰か女性が王子に触れるような事態に陥ったら、どんな惨事になるか分からない。今まで王子は、さぞかし気が休まらない日々を送ってきたのだろう。今さらながらにそんなことを思った。
「抱くぞ」
「え?」
不意に耳元でそう言われ、リーゼロッテの体が浮き上がる。
「なな何をなさるのですか」
「お前、足を痛めているだろう。隠してもわかるぞ」
周囲にいる貴族の視線が刺さる。抱き上げられたこの状況を回避するには、一体どうしたらいいのだろうか。そんなことを考えるも、ジークヴァルトはお構いなしに歩き出した。
リーゼロッテを横抱きにしたまま、ずんずんと進んでいく。そんなジークヴァルトを前に、驚き顔の貴族たちが次から次に道を譲っていった。
恥ずかしさのあまりその首筋に顔をうずめる。足は痛いには痛いが、歩けないほどではない。なんとか降ろしてもらおうと、リーゼロッテは青い瞳を覗き込んだ。
「ヴァルト様……わたくし歩けます」
「なるべく目立つように言われている。堂々と顔を上げていろ」
逆に耳もとで囁かれてしまう。やはりこれは王子に注目がいかないための陽動作戦なのだ。命令とあらば、自分もそれに従うしかないだろう。
覚悟を決めてリーゼロッテはその顔を上げた。すれ違う貴族たちに物珍し気に見つめられて、客寄せパンダの気分になってくる。
(もういいわ! やるならとことんやってみせるわ!)
重い声が響くとわっと歓声が上がり、貴族たちは思い思いに動き出す。ダンスフロアにも人がなだれ込むが、一目散にハインリヒ王子に向かっていく一団が目に入った。
ハラハラしならその動きを目で追っていくと、王子とカイは既に壇上にいた。王と王妃の座る玉座の斜め後ろに立ち、耳元で何かを囁き合っている。しばらくすると、王子はカイを丁寧にエスコートしながら、王族専用の扉を出ていった。
(よかった……王子殿下は無事に退場されたみたい)
この人だかりに囲まれでもして、誰か女性が王子に触れるような事態に陥ったら、どんな惨事になるか分からない。今まで王子は、さぞかし気が休まらない日々を送ってきたのだろう。今さらながらにそんなことを思った。
「抱くぞ」
「え?」
不意に耳元でそう言われ、リーゼロッテの体が浮き上がる。
「なな何をなさるのですか」
「お前、足を痛めているだろう。隠してもわかるぞ」
周囲にいる貴族の視線が刺さる。抱き上げられたこの状況を回避するには、一体どうしたらいいのだろうか。そんなことを考えるも、ジークヴァルトはお構いなしに歩き出した。
リーゼロッテを横抱きにしたまま、ずんずんと進んでいく。そんなジークヴァルトを前に、驚き顔の貴族たちが次から次に道を譲っていった。
恥ずかしさのあまりその首筋に顔をうずめる。足は痛いには痛いが、歩けないほどではない。なんとか降ろしてもらおうと、リーゼロッテは青い瞳を覗き込んだ。
「ヴァルト様……わたくし歩けます」
「なるべく目立つように言われている。堂々と顔を上げていろ」
逆に耳もとで囁かれてしまう。やはりこれは王子に注目がいかないための陽動作戦なのだ。命令とあらば、自分もそれに従うしかないだろう。
覚悟を決めてリーゼロッテはその顔を上げた。すれ違う貴族たちに物珍し気に見つめられて、客寄せパンダの気分になってくる。
(もういいわ! やるならとことんやってみせるわ!)