氷の王子と消えた託宣 -龍の託宣2-
「騎士の中にも異形に飲まれている者がいます。どうかお気を付けを」
誘導するように廊下の先を行くカイの背を追いかける。不穏な空気は王城の廊下まで広がっているようだ。普段は無害な異形までもが毛を逆立てるように殺気立っていた。
「一体何が……」
「分かりません。分かりませんけど、狙いはハインリヒ様のようです。ここは素直にお逃げください」
頷きかけて、ハインリヒははっとした。会場でも異形に飲まれるように錯乱する者がいた。異形は弱い心に付け込んで、時に犯罪者を生むことになる。
「アンネマリーがいなかった」
人の助けが入らないところで、誰かに襲われでもしたら。そう思うとハインリヒは一気に青ざめた。
「アンネマリー嬢なら、殿下の庭近くの廊下にいますよ。あそこにあるソファで待つように言ってあります」
「なぜ、そんなところに……?」
「廊下で迷っていたようなので、あとで迎えに行こうかと」
「どうしてすぐ連れてこなかったんだ!」
「オレ、その時まだカロリーネ姿だったから……って、ハインリヒ様、どこ行くんですかっ」
いきなり走り出した背に叫ぶ。
「アンネマリーを探しに行くに決まっているだろう!」
その姿はあっという間に廊下の先に消えていく。
「ったく、ハインリヒ様、あなたがいちばん危険だっつうの」
ハインリヒのそばが今いちばんの危険地帯だ。アンネマリーを庇いながら襲われでもしたら、不利どころが窮地にしかならない。しかもハインリヒはアンネマリーに触れることすらできないのだ。そんな中彼女を守るのは、腕の立つ騎士でも難しいことだろう。
カイは呆れながらも、仕方なしにその後を全速力で追いかけた。
誘導するように廊下の先を行くカイの背を追いかける。不穏な空気は王城の廊下まで広がっているようだ。普段は無害な異形までもが毛を逆立てるように殺気立っていた。
「一体何が……」
「分かりません。分かりませんけど、狙いはハインリヒ様のようです。ここは素直にお逃げください」
頷きかけて、ハインリヒははっとした。会場でも異形に飲まれるように錯乱する者がいた。異形は弱い心に付け込んで、時に犯罪者を生むことになる。
「アンネマリーがいなかった」
人の助けが入らないところで、誰かに襲われでもしたら。そう思うとハインリヒは一気に青ざめた。
「アンネマリー嬢なら、殿下の庭近くの廊下にいますよ。あそこにあるソファで待つように言ってあります」
「なぜ、そんなところに……?」
「廊下で迷っていたようなので、あとで迎えに行こうかと」
「どうしてすぐ連れてこなかったんだ!」
「オレ、その時まだカロリーネ姿だったから……って、ハインリヒ様、どこ行くんですかっ」
いきなり走り出した背に叫ぶ。
「アンネマリーを探しに行くに決まっているだろう!」
その姿はあっという間に廊下の先に消えていく。
「ったく、ハインリヒ様、あなたがいちばん危険だっつうの」
ハインリヒのそばが今いちばんの危険地帯だ。アンネマリーを庇いながら襲われでもしたら、不利どころが窮地にしかならない。しかもハインリヒはアンネマリーに触れることすらできないのだ。そんな中彼女を守るのは、腕の立つ騎士でも難しいことだろう。
カイは呆れながらも、仕方なしにその後を全速力で追いかけた。